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インターネットを探して アンドリュー・ブルーム著

物理的な「場所」を求める旅

「インターネットはどこにあるのか」。無線LANや携帯電話の電波がいたるところを飛び交っている現在では、こうした質問はどこか的外れなもののように思えるかもしれない。だが一方で、中国ではインターネットの検閲が行われているといった話を聞くと、どこにでもあるもののように思えるネットが、実は物理的な世界の中に埋め込まれたものであることを強く意識させられる。

(金子浩訳、早川書房・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書は、このネットの物理的な側面に焦点を当て「インターネットが実在している場所」を求めて世界中を旅した記録だ。自宅のネットワークのケーブルをリスにかじられたところから始まった著者の旅は、世界で初めてネット通信が行われた際に用いられたルーターや、ヨーロッパとアフリカをつなぐ光ファイバー、グーグルのデータセンターなど、文字通りありとあらゆる「場所」に及んでいる。インターネットに関する技術的な知識がなくても、ウイットに富んだ例えや、著者の取材した人々の語るエピソードの数々が、ネットの物理性に明確なイメージを与えてくれるだろう(もちろん技術に詳しい方がより楽しめる)。

インターネットの物理性といっても、本書が描こうとしているのはネットの歴史だとか、パケット通信の仕組みだとか、そういう話ではない。本書を読んでまず思い出したのは、ピエトラ・リボリの『あなたのTシャツはどこから来たのか?』(東洋経済新報社)だ。自分の手元にあるTシャツが、アメリカの綿花畑や中国のTシャツ工場を経て、アフリカの港で古着として売られるまでを追跡した同書と同じく、本書はインターネットというグローバルな物理インフラがどのように結ばれ、私たちの手元にデータを届けているかについて考察した、いわば「インターネットの社会地理学」だ。

本書で著者も述べているように、私たちはインターネットを理念的、哲学的に捉えすぎているし、場合によっては魔法のようなものだと思ってさえいる。だがそれが物理的に支えられている以上、そこには様々な政治や市場の働きが介在している。本書が教えてくれるのは、そういう当たり前だが、大事なことなのだ。

(社会学者 鈴木謙介)

[日本経済新聞朝刊2013年3月24日付]

インターネットを探して

著者:アンドリュー・ブルーム.
出版:早川書房
価格:1,890円(税込み)

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