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気になるTPP日米自動車合意の副作用

環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる日米両政府の事前協議は、米国が日本からの自動車の輸入にかけている関税の削減を先送りする方向で大筋合意した。日本が農産物で貿易自由化の「聖域」を求めたため、その見返りとして米国の自動車も事実上の「聖域」の扱いとした印象が強い。

経済大国である日米両国には、世界の自由貿易を主導する責任がある。両国が露骨に例外を設ける動きを見せれば、新興国を中心にそれぞれの聖域を主張する空気が広がりかねない。

2月の日米首脳会談では、安倍晋三首相とオバマ大統領が自由化の過程で「配慮すべき分野」が双方にあると確認した。これにより安倍首相は国内の反対派を説得しやすくなった。交渉の入り口で右往左往していた不毛な政治状況を打破する工夫として、日米首脳の合意は評価できる。

ただ、その副作用には細心の注意を払わなければならない。TPP交渉の中で、ベトナムやマレーシアなどアジアの新興国は、自動車分野を中心に、自国の産業をできるだけ関税で保護して、育てようとしている。日米の聖域の論議は、新興国が市場開放や改革を先送りする格好の口実として使われる懸念がある。

米国の自動車業界は、もともと日本の交渉参加に反対していた。今回の日米合意に意を強くして、今後は堂々と関税による保護を求め続けるかもしれない。

タイやフィリピン、台湾もTPPに関心を示している。これから新規で交渉に加わろうとする国・地域も、それぞれ自由化が難しい市場分野を抱えている。例外がありうるとの見方が広がれば、高水準の自由化で貿易と投資の拡大を目指しているTPPの意義が損なわれてしまう。

日本国内で保護主義勢力の動きが強まっているのも心配だ。自民党は、党内にTPP交渉21分野を網羅する5つの専門組織を設け、政府の挙動を細かく監視する体制を整えた。どの品目が聖域に相当するかという議論や、細目に注文をつけて交渉を遅らせようとする「守り」の動きばかり目立つのが残念だ。

自由化の例外とは、あらかじめ想定するのではなく、あくまでも交渉の結果として生じるものである。自由貿易を目指す安倍政権の意志が本物かどうか、世界が見ていることを忘れてはならない。

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