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同盟強化へ首相が行動するときだ

「日米同盟の信頼、強いきずなは完全に復活した」。安倍晋三首相はオバマ米大統領と会談した後に、こう宣言した。

確かに、今回の訪米で日米関係を強める道筋を敷くことはできた。だが、それが実を結ぶかどうかは、今後の行動にかかっている。

その最たるものが、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加問題だ。

TPP参加へ改革急げ

両首脳は、日本のTPP交渉参加について「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することは求めない」と確認し、共同声明に盛り込んだ。この合意によって、安倍政権が交渉参加に踏み切る条件は整った。

安倍首相は、先の衆院選で「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」と訴えた。一方、米主導のTPP交渉は「全ての貿易品目で自由化を目指す」との目標を掲げている。

両首脳はこうした互いの立場を踏まえ、ぎりぎりの線で折り合ったといえる。全品目を交渉の机に載せるが、最終的に関税を撤廃するかどうかは交渉の結果次第――。共同声明にはこんな認識を書き込んだ。

安倍首相が参加を決断できるようにするため、オバマ大統領が「高水準の自由化」というTPPの看板を損いかねないリスクをとって、共同声明の文言を練ったと考えるべきだ。

次は安倍首相が行動しなければならない。実際の交渉参加までに、まだ多くの関門が残っている。7月の参院選を控えて自民党内には反対の声が根強く、決断すれば党内で批判が高まるだろう。

自由化への不安を取り除くには、農家への一時的な補償措置や、国内農業の競争力を高める抜本的改革が欠かせない。だが自民党と農林水産省、農業協同組合には農業に関連した既得権益の構造が色濃く残っている。TPPの交渉に向け、安倍首相はこうした壁も突き破らなければならない。

そもそも、日米両国にとっての最大の課題は、台頭する中国にどう向き合い、協力を引き出していくかである。TPPはそのための経済の枠組みだ。両国は同様に、外交・安全保障面でも協力の足場を固めなければならない。

今回の会談はその意味でも成果があった。日米が結束し、中国に責任ある行動を促していく体制づくりで一致したからだ。

特に尖閣諸島をめぐり、オバマ大統領から「日米が協力して対応していく」との言質を取りつけた意味は大きい。

こうした米側の支持が揺らがないよう、安倍首相は緊密に連携を保ってほしい。それには日本が冷静に対応し、決して中国を挑発しない姿勢を貫くことが前提だ。

日米同盟を深めるためには、言葉だけでなく、行動が必要だ。米国の国防予算は大幅に削られようとしている。米軍のアジア関与が息切れしないよう、日本として支えていく努力が大切だ。

では、どうすればよいのか。まずは、安倍首相が会談でも約束した日本の防衛力強化だ。日本を守るための負担が減れば、米軍はアジアの他の地域に余力を回せる。

政府は民主党政権下でつくられた防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直し、年内に新たな大綱を策定する。集団的自衛権の行使に向け、有識者による議論も再開した。米側とも調整しながらこれらの作業を急ぎ、防衛体制の充実につなげてもらいたい。

日米韓の連携も急務

同時に避けて通れないのが、米軍普天間基地の移設問題だ。安倍首相は会談で、早期に移設を進めると伝えた。市街地にある普天間の危険を取りのぞくうえで、移設は不可欠だ。地元の理解を得られるよう、真剣に努力してほしい。

安倍首相がこれらの課題に取り組み、日米関係が強化されていったとしても、日本の国益を守るにはなお十分とはいえない。日本の周辺には、日米だけでは対処できない危機が起きているからだ。

その筆頭が北朝鮮による核兵器とミサイルの開発だ。北朝鮮に圧力を強めるには、日米と韓国などの協力が急務だ。だが日韓関係は竹島や歴史問題でささくれだったままだ。これには米政権も強い懸念を抱いているという。

安倍首相は、25日に発足する韓国の朴政権と安定した関係を築くよう、最善の努力を払ってほしい。それに失敗すれば、日米関係にも悪い影響が及びかねない。

山元政権下で傷ついた日米関係は、1回の会談で元通りになるはずがない。安倍首相の指導力が試されるのはこれからだ。

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