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アイスランドからの警鐘 アウスゲイル・ジョウンソン著

繁栄から破綻に至る経緯を記述

北欧の小国アイスランドが金融帝国へ変貌を遂げたと思いきや、リーマン・ショックに遭遇してまたたくまに破綻に追い込まれる、その前後の経緯を記した書である。アイスランド最大の銀行のエコノミストであった著者は、10世紀以前からの同国の成り立ちから論を進める。文化や、開国と鎖国の間に交互に揺れた歴史をひもときながら、漁業と温泉しかなかった国が1990年代以降どのようにグローバル金融ビジネスへ参加し、繁栄を誇り、しかしついには国際通貨基金(IMF)の支援を求めるようになったのかを描く。

米国や英国、ドイツといった大国や、南欧から見た金融危機やグローバル経済を語る書物は非常に多いが、本書は人口32万人という小国の視点を通して克明に事実を記載している。「欧米」「欧州」、小さい単位でも「北欧」とひとくくりで議論しがちな日本人にとってはアイスランドの北欧での位置づけや、英国やユーロとの関係といったユニークな視点から経済や金融を考えるのは新鮮である。

著者はアイスランドと米国との類似性を指摘する。また、アイスランドを破綻に追い込んだ原因をヘッジファンドや格付け会社、米連邦準備理事会(FRB)や欧州連合(EU)や英国の中央銀行の対応などに求める。こうした分析については、原書が発表された2009年の欧米論壇での反応と同様に賛否両論があろう。わずかなガス漏れにも反応するために鉱山労働者たちがカナリアを炭鉱に連れていく習慣を引き合いに出し、アイスランドは欧米にとっての炭鉱のカナリアと述べたが、当時もその鮮明なイメージは注目を浴びた。

最後に日本語訳について。訳者はあとがきで自分は専門家ではないと述べている。訳語は日本の金融・ビジネス用語として一般的に使われているものとかい離していて、こなれているとはいえず、原文で文意を確認したいと感じるところも多い。ただ、日本語版には、原書にはない、訳者の家族の手になるアイスランドの風景写真や絵が挿入されていて、内容に親しみがわく。著者が伝えたかったであろう、小国の歴史や文化が手作り感で伝わってくる気がする。

(早稲田大学教授 川本裕子)

[日本経済新聞朝刊2013年2月17日付]

アイスランドからの警鐘―国家破綻の現実

著者:アウスゲイル・ジョウンソン, Asgeir Jonsson.
出版:新泉社
価格:2,730円(税込み)

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