螢草 葉室麟著 「人生の教科書」と呼べる傑作

2013/2/14付
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(双葉社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(双葉社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

父が無念の詰め腹を切らされた菜々は、出自を隠し、風早家に奉公することに。が、御家の不正をめぐって主(あるじ)に危機が迫り、その中心人物に父の仇(かたき)がいると知った時、彼女は、仇(あだ)討ちのための剣をとる。

葉室麟は、直木賞受賞後、続々と作品を刊行しているが、そのことごとくが平均を上回る出来ばえ。その中で注目すべきは文体であろう。特に地の文には、日本の作家の文体が英語文体に毒され切っていない以前の素朴さがうかがえる。そして、その中にちりばめられた凜冽(りんれつ)さとユーモア。脇の登場人物も、一見、ステレオタイプのように見えるが、ギリギリのところでそれを回避している。

特に剣の師、〈だんご兵衛〉こと、壇浦五兵衛の「たしかに、剣はひとを斬るものではある。しかし、何よりもまずおのれの心の非を斬るものでなければならぬ」といった箴言(しんげん)が要所要所を固め、効果は抜群。

かつて淀川長治は、生前、"映画は人生の教科書です"という旨の発言を繰り返していたが、この"映画"を"小説"と言い換えたところに本書があるといっていい。

葉室作品にまた一つ傑作が加わったことを喜びたい。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2013年2月13日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

螢草

著者:葉室 麟.
出版:双葉社
価格:1,575円(税込み)

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