春秋

2013/2/8付
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「真理は時の娘で、権威の娘ではない」。欧州の古いことわざだ。権力者は本当のことを一時は隠すことができても、時間がたてば明らかになる、といった意味だろう。この言葉を書名に生かしたミステリー小説がある。英国の作家ジョセフィン・テイの「時の娘」だ。

▼大ケガをして入院したロンドン警視庁の警部が、ベッドの上で史料をあれこれとひっくり返して歴史上の人物の汚名をすすぐ、というのが筋書き。はじめて世に出てから60年以上たった今でも、優れた歴史ミステリーとして評価は高い。そして警部が汚名をすすいだ人物とは、15世紀のイングランド王、リチャード3世だ。

▼この君主の名前を冠したシェークスピアの史劇を知る人なら、ピンとくるのではないか。英国では「悪逆の代名詞」とされてきた。とりわけ評判が悪いのは、幼い甥(おい)2人をロンドン塔にとじ込め最後は暗殺したとされる所業だ。これを警部は、後世の権力者によるぬれぎぬだと結論づける。持ち前の刑事魂をはたらかせて。

▼英国の中部で最近、長らく行方不明だったリチャード3世の遺骨がみつかったそうだ。地元の大学の研究者たちはリチャード3世の姉の子孫を探しだして、DNA鑑定でほぼ間違いないと判断した。遺骨から復元された顔は悪逆というイメージにはほど遠いという。死後500年あまり。「時の娘」が姿を現すのだろうか。

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