不平等について ブランコ・ミラノヴィッチ著 グローバルな所得分布を考察

2013/1/29付
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 経済成長が続くアジアを中心に「ネクスト中間層」が新たな消費の主役として注目されている。一方、中国の反日暴動など貧富の格差を背景とする社会不安は高まっている。所得と富の不平等という問題を現代から過去の歴史に遡って考えることが本書のテーマである。数々の興味深いエピソードを交えつつ、豊富なデータに基づいた説得力ある議論が展開される。

(村上彩訳、みすず書房・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(村上彩訳、みすず書房・3000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 著者は、グローバルな不平等を「一国内の不平等」と「国家間の不平等」の合算と定義し、後者の影響が強いと述べる。最富裕層の所得が先進国の最貧層の所得にも達しない国が世界には多く、急成長する中国やインドでさえ米国との「1人当たり絶対所得」の差は縮まっていない。「グローバルな中間層」の定義もこうした事実を踏まえるべきで、西欧諸国の貧困レベルに相当するような基準は意味がないと指摘する。

 本書からは著者の「数値」に対する情熱が伝わってくるが、データの問題点についても丁寧に説明されている。近年、著者の所属する世界銀行の関与により、中国、旧ソ連、アフリカの家計調査の整備が進められてきた。しかし各国の所得分布データが得られるのは1980年代半ばからであり、国によって所得の定義が異なるなど問題点も多いと指摘する。不平等の算出方法についても、各国を同等に扱う方法と人口に比例してウエイト付けする方法があり、最近では中国とインドの急成長によって2つの方法で差が生じるようになったことに注意を喚起する。

 本書ではグローバリゼーションと不平等の関連性についても考察している。著者はグローバリゼーションによって期待された不平等の縮小はみられず、実際には資本の流れや技術アクセスの問題などから国家間の不平等は拡大していると述べている。

 グローバリゼーションは、19世紀の英国主導の時代から、20世紀の多国籍企業が主導する時代を経て、世界の多種多様な個人が主役となる時代に突入している。新しい時代のグローバリゼーションがグローバルな所得分布にどのような影響を及ぼすのか、本書の第2弾を期待したい。

(日本リサーチ総合研究所主任研究員 藤原裕之)

[日本経済新聞朝刊2013年1月27日付]

不平等について―― 経済学と統計が語る26の話

著者:ブランコ・ミラノヴィッチ.
出版:みすず書房
価格:3,150円(税込み)

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