原発安全の理念が見えない

2013/1/26 3:30
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原子力規制委員会は原子力発電所の新安全基準の骨子を今月末にも公表する。地震や津波、テロなど外部からの脅威に備えて、重要な設備の多重化などを電力会社に義務付ける。新基準づくりは規制委にとって最優先の仕事だ。しかし規制委の議論の進め方は、目指すべき安全目標など肝心な点を置き去りにしている。

東京電力・福島第1原発事故では、地震で原発に電気を送る送電線が壊れ、津波によって非常用発電機が水没した。全電源喪失に陥り原子炉を冷却できなくなった。

この教訓を踏まえ、新安全基準は安全設備を多重・多様化し、自然災害などへの対応力を増す。また炉心溶融などが起きても、放射性物質の放出を回避する手段を手厚く備えるよう求める。

原案は原子炉から離れた場所に「第2制御室」を置き、今ある中央制御室が使えない状況下でも、遠隔で原子炉の安全を確保することなどを盛り込んだ。おおむね納得がいく内容だ。

気になるのは、日本の原子力が目指すべき安全の目標や安全規制の基本理念については明快な議論が少ない点だ。例えば、安全の水準を「世界で最も厳しいレベルに維持する」と規制委は強調するが、具体性を欠く。福島事故までは重大事故の発生確率を100万年に1回程度に抑えることが目標とされた。これを引き上げるのかどうかすらはっきりしない。

米国の原子力規制委は「信頼するがチェックもする」を基本姿勢とし、電力会社との信頼関係の上に厳格な検査態勢を築く。電力への不信が強い今の日本で同じ考え方を採るのは容易ではない。しかし安全を最優先する文化を育て根付かせるには、目標や理念について事業者や自治体の意見を聞き、徹底した議論が必要ではないか。

活断層や安全設備などの各論が先行し全体像が曖昧なままでは、規制委がどのように原子力の安全確保を実現しようとしているのか、国民の目からわかりづらい。規制当局への不信も解けない。

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