2018年9月20日(木)

オープン・サービス・イノベーション ヘンリー・チェスブロウ著 開放的な事業モデルへの転換説く

2012/12/25付
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 実務に影響力を持つ経営学者でヘンリーと言えば最近までヘンリー・ミンツバーグだった。それが今は、どちらのヘンリーかと聞き返す必要がある。「もう一人のヘンリー」とは本書の執筆者ヘンリー・チェスブロウだ。「内部のイノベーションを加速するため意図的に社外と知識を出し入れする」オープン・イノベーションを提唱し一躍注目されるようになった。

(博報堂大学ヒューマンセンタード・オープンイノベーションラボ、TBWA/HAKUHODO監修・監訳、阪急コミュニケーションズ・2200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(博報堂大学ヒューマンセンタード・オープンイノベーションラボ、TBWA/HAKUHODO監修・監訳、阪急コミュニケーションズ・2200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 現在、世界の多くの製品でコモディティ化(汎用品化)が進み、製品ライフサイクルが短縮している。「コモディティ化のワナ」から抜け出る方法として著者は「オープン・サービス・イノベーション(OSI)」を提唱する。メーカーでも、事業を製品中心でなくサービス中心でとらえ直す。ユーザーをパートナーにイノベーションを共創する。社外と双方向に知識をやりとりしイノベーションを促進する。サービスを中心とし社外に対し開放的な新しい事業モデルに転換する。これら4点がOSIを実現するカギになると説く。

 紹介事例は知的好奇心をくすぐる。スペインのカタルーニャ地方に店舗を構えていたレストラン「エル・ブリ」。1997年からミシュラン3つ星を維持していたが、営業日は1年の半分。残り期間をレシピ開発に費やしていた。しかも劇的に新鮮な食体験を提供するレシピの中核アイデアは自前でなくハーバード大学など外部研究機関から来たという。他方、エル・ブリはノウハウを共同ブランド開発の形で他社に提供し、レストラン事業以外の分野でもイノベーションを収益化していた。

 楽曲販売のベンチャー企業、ポップカッツの事例も興味深い。同社は流行を敏感に察知する仕掛け人「トレンドセッター」に報酬を与え流行を先読みする。トレンドセッターがダウンロードした楽曲を別の人が購入した場合、購入額の何割かを受け取れるようにしているのだ。同社のサイトではランキング上位のトレンドセッターを公表し初心者が新しい音楽を探しやすいようにしている。サービス化・コモディティ化が進む経済下で「すでに起こった未来」を効率的に知るのに絶好の書である。

(神戸大学教授 小川進)

[日本経済新聞朝刊2012年12月23日付]

オープン・サービス・イノベーション 生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する

著者:ヘンリー・チェスブロウ.
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,310円(税込み)

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