タブレットはノートPCの代わりになるか 1カ月試した
何ができるか徹底調査

今回使用したのは米アップルのiPad2。画面サイズは10インチで、メモリーは16ギガバイトだ。最新型の2世代前になるが、この機種でできることなら、最新型でもできる。できること、できないことは最新型と大きく変わらないはずだ。電話回線でインターネットに接続できるモデルではないので、外出先でネットにつなげるための装置(無線LANルーター)を使う。
この10年間、家を出るときには必ずノートパソコンをカバンに入れていた。外出先での用途は「インターネット閲覧」「メールのチェックと作成」「取材後のメモの作成」など。これらの作業がタブレットでどの程度、快適にできるかを確認してみる。
文章打ち込みには2倍の時間かかる
まずはインターネット閲覧。これは全く問題なかった。それどころかタブレットのほうが便利な場面がある。なにしろ起動が速い。パソコンのように起動してネットにつなげたら「ソフトをアップデートしてください」などと言われることもなく、ストレスなく使うことができた。
打ち合わせでホームページを見るときも便利だ。平らなので、テーブルをはさんで同じ画面を見ることができる。

メールチェックも問題なかった。添付ファイルとして送られてくるエクセルやワードのファイル、PDFなども問題なく開けた。
戸惑ったのはメールに返事を書くときだ。画面にキーボードを表示させて打ち込むのだが、キーを打つ感触がない。押したかどうか不安になる。
文章の短いメールはまだいいが、1時間のインタビューをメモにまとめるのはストレスがたまる。タイプミスが増え、入力も遅くなった気がする。
そこで同じ文章をノートパソコンとタブレットで入力し、かかった時間を比較してみた。例えば映画「ドラゴン・タトゥーの女」の原作「ミレニアム1」の冒頭の1段落(618文字)を打ち込むのにかかった時間は、ノートパソコンの7分10秒に対し、タブレットは13分10秒。ほかに古典小説、童話、エッセーなどでも試したが、どれもほぼ2倍の時間がかかった。
調査会社BCNでパソコンやタブレットを担当する森英二さんは「情報を作る人はパソコンが、情報を閲覧する人はタブレットがむいている」という。例えば自分でホームページを作るにはパソコンが便利。一方、他人のページを見るだけの人や、書き込むとしても形が決まっている交流サイト(SNS)程度なら、タブレットの入力機能でも十分だといえる。
写真大きく表示、皆で盛り上がる
予想外に面白かったのが写真撮影。決して高画素ではなく、本体が大きいので片手で撮影しようとすると、ぶれた写真になることも多かった。「これは使えない」と思ったのだが、印象が変わったのが宴会での写真撮影のとき。撮った写真が大きく表示されるので、みんなで見ることができる。これが盛り上がった。

「東京・巣鴨で高齢女性の集団が、タブレットで記念写真を撮っているのを見た」というのは、タブレットに関する書籍を多数手がけるオフィスマイカの井上真花さん。「スマートフォン(スマホ)より画面が大きく、ノートパソコンと違って画面をみんなで見られる。タブレットは楽しい写真を撮るのにむいている」
自宅のプリンターではファイルを直接、印刷することはできなかった。ただ「スマホやタブレットに対応したプリンターもある」(井上さん)。
1カ月間、使った結果、思っていたよりも不便なことは少なかった。起動の速さなどノートパソコンより快適なことも多い。
今回はiPadを使ったが、井上さんによれば「アンドロイドのタブレットでもできることはほとんど変わらない」。操作性は異なるが「これはウィンドウズとマックの違いと同じ」。価格はアンドロイドのほうが安い場合が多い。
調査会社GfKジャパンでタブレットを担当する岡田涼子さんによると、タブレットを購入する動機は「パソコンより持ち運びやすい」「スマホより画面が大きい」という人が多い。ただ実際に使って満足した点を聞くと「すぐ使える」「操作が簡単」と「気軽さ」を評価する声が増える。タブレットを外に持ち出してみると、確かにその気軽さを実感できた気がする。
我が家の小5の娘にはフィルタリングをかけたノートパソコンを渡しているのだが、タブレットを購入して以来、すっかり使わなくなった。探している情報を見つけるのも早くなった気がする。
「パソコンは不要」という人は、今後も増えそうだ。長年パソコンを使ってきた人間には寂しい気もするけれど。
(編集委員 大谷真幸)
[日経プラスワン2012年12月22日付]
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