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新政権は経済と外交の停滞を破れ

自民、公明両党の連立政権が26日に発足する。新首相に選ばれる自民党の安倍晋三総裁は17日の記者会見で、「危機突破内閣」をスタートさせる考えを示した。

日本は確かに難局にある。経済の停滞と財政の悪化は止まらず、領土問題をめぐる緊張も続く。この閉塞状態を「決める政治」で打開しなければならない。

日本の名目国内総生産(GDP)は20年前とほぼ同じなのに、国と地方の長期債務は3倍に膨らんだ。経済政策の目標はまさに成長と財政再建の両立に尽きる。

成長力底上げが重要

急がなければならないのはデフレからの脱却と円高の是正だ。安倍氏は政府と日銀の政策協定で2%の物価目標を掲げ、大胆な金融緩和を引き出すと公約した。

強力な金融緩和は今の日本に欠かせない。その効果を高める工夫も試される。しかし日銀の独立性を脅かし、財政赤字の補填を迫るような行為は慎むべきだ。

もちろん金融緩和だけで日本経済を再生することはできない。民間活力を引き出し、成長力を底上げする戦略との連携が必要だ。アジアをはじめとする外需の取り込みと、少子高齢化などで縮む内需の掘り起こしをともに促したい。

「成長による富の創出」を目指す安倍氏は、企業や国内立地の競争力強化を重視する。その手段として大胆な法人減税や不断の規制改革を公約したのはいい。

問題は環太平洋経済連携協定(TPP)への慎重な姿勢だ。輸出や直接投資で稼ぐ力を高めるには、企業や個人が海外で活躍できる舞台を広げなければならない。こうした枠組みを築くTPPの交渉に早急に参加してほしい。

自民党は「聖域なき関税撤廃」には反対だが、守るべき聖域は交渉の中で勝ち取ればいい。農業の過渡的な保護策と競争力を高める改革も急がなくてはならない。

ただし政府の成長戦略が財政再建に逆行するのでは困る。新政権は大規模な経済対策の検討に着手するが、無駄な支出やばらまきは排除する必要がある。自民党が掲げる「国土強靱(きょうじん)化計画」にも節度を求めたい。

基礎的な財政収支を改善し、2020年度までに黒字化するという目標を堅持するのは当然だ。消費増税を確実に実行するとともに、社会保障を含む歳出の抑制にも本腰を入れなければならない。

原子力発電所を再稼働させるかどうかも大きな問題である。自民党は「原子力規制委員会の判断を踏まえて順次決める」と公約したが、連立を組む公明党とは主張に隔たりがある。再稼働が遅れれば電気料金が上がり、個人や企業の負担が増しかねない。自公の政策協議を急ぎ、透明性の高い手続きやルールを早く示すべきだ。

原発の位置づけも含めた中長期のエネルギー政策も問われよう。自民党は「10年以内に決める」との方針を示した。自然エネルギーの利用を目いっぱい広げ、省エネをどう強めるか。具体的な政策を明らかにしてほしい。

まずは日米同盟強化を

外交と防衛の立て直しも待ったなしだ。日本は領土をめぐり、中国と韓国、ロシアからの攻勢にさらされている。尖閣諸島付近の領海には中国船が相次いで侵入し、初めて領空も侵犯された。

こうした危機に歯止めをかけるため、安倍氏は日米同盟を強めるとともに、アジア太平洋の国々とも協力の輪を広げていく方針を掲げた。これは的を射たものだ。

問題はどう実現していくかである。いわゆる従軍慰安婦問題や靖国神社の参拝問題などについて、安倍氏は保守的な考え方や歴史観の持ち主として知られる。

安倍氏がこうした考え方を外交の前面に押し出すようなら、韓国をはじめとするアジア諸国の一部から反発を招き、米国の警戒感も誘いかねない。

いまは中国をにらんだ対外戦略の再構築を急ぎ、「領土危機」ともいえる日本の現状に一刻も早く終止符を打たなければならない。自身の理念は別として、日米同盟の深化とアジア諸国との連携を最優先すべきだ。

日本政府による尖閣購入をめぐる対立では、日中のパイプの細さも浮き彫りになった。互いの読み違いから危機を招くのを防ぐため、要職にある政治家同士の外交ルートを築く努力も必要だ。

自民党は尖閣の実効支配を強めるため、公務員の常駐を検討する公約も掲げた。これを実行すれば、日本に強硬に出る口実を中国側に与える恐れがある。領海を守るため、海上保安庁や自衛隊の体制を拡充する方が先決だ。

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