ふたりの微積分 スティーヴン・ストロガッツ著
数学に隠れた師弟の厚情

ある数学者と高校時代の恩師との書簡集……と書いてしまっては身も蓋もない。この本は、数学エッセーであり、数学トリビア集であり、心温まる師弟の手紙のやりとりでもある。私は、この本を読んでいて、自然に涙が流れてしまった(帯の推薦にそう書いてあったので「数学本を読んで泣く奴がいるかよ」と、たかをくくっていたが、本当にじわっと来た)。
大学で応用数学を教える著者スティーヴンは、高校時代に微積分を教わった先生(ジョフ)と、卒業後も、手紙のやりとりを通じて交流を続けていた。家族の死、離別、就職、退職、病気など、二人の人生は大きく揺れ動くが、手紙には、ほとんど数学の話題しか出て来ない。その対照が鮮やかで、かえって、淡々と数学を論じた手紙の文面から、師弟愛の深さが感じられる。
手紙で扱われる数学は、フィボナッチ数列からカオス理論まで幅広く、数学ファンには目から鱗(うろこ)が落ちるような話題ばかり。
数式が苦手な人は、エッセー部分だけ読んでも、数学の楽しさと奥深さに触れることができる。珠玉の数学本である。南條郁子訳。
★★★★★
(サイエンス作家 竹内薫)
[日本経済新聞夕刊2012年11月28日付]★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった