2018年11月13日(火)

日中関係史 1972―2012 1~3 高原明生・服部龍二ほか編 現状の理解を助ける多角的な考察

2012/11/26付
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日本と中国の関係は今、1972年に国交を正常化してからの40年で最悪とまで言われる状態に陥っている。きっかけは周知のように、日本政府が沖縄県の尖閣諸島を国有化したことだ。

(東京大学出版会・1は3800円、2と3は各3500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(東京大学出版会・1は3800円、2と3は各3500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

ただ、尖閣問題だけで現状がもたらされたわけではない。両国の力関係が大きく変わったことや国民感情のズレ、双方の指導者の世代交代にともなう変化など、歴史的な、そして構造的でもある様々な要因が、しばしば絡み合いながら作用している。

緊張がこれ以上高まらないようにするにはどうすればいいか。どうやって対立を解きほぐして難局を打開すべきか。そもそもどんな日中関係を目指すべきなのか。日本人も中国の人たちも、深く考えるべきときだろう。

それには、これまでの歩みを振り返る作業が欠かせない。気鋭の研究者やジャーナリスト、中国ビジネスに携わってきた企業人たちが結集してまとめた本シリーズは、そんな作業を進めるうえで基礎となる文献と評価できる。

1巻の政治編はよくまとまっている。過去40年の日中関係のなかで節目といえる出来事について、双方の政策決定過程にまで踏み込んだ分析が披露される。

たとえば82年の第1次教科書問題。日本の教科書検定に関する日本メディアの誤報が、日中間の先鋭な政治的争点に発展した。

背景には、日本国内で意見の分裂があったこと、一方の中国ではナショナリズムを高めるための材料として共産党政権が利用したことがあった、という。

2巻の経済編、3巻の社会・文化編では、日中関係がいかに多面的で複雑に発展してきたかを再確認できる。とはいえ、ことがらの性格上、政治編に比べると散漫で深みを欠く印象はぬぐえない。

一例を挙げるなら、中国に進出した日本企業が直面した問題だ。税制や債権の回収、労務問題などは、それぞれ一冊の本に収まりきらないほどの広がりを持つが、わりあい通り一遍の分析にとどまっている。

(論説委員 飯野克彦)

[日本経済新聞朝刊2012年11月25日付]

日中関係史 1972-2012 I政治

著者:
出版:東京大学出版会
価格:3,990円(税込み)

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