一刀流無想剣 斬 月村了衛著 柴錬へ敬意漂う剣豪小説

2012/11/15付
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(講談社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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近未来を舞台とした「機龍警察」シリーズで知られる月村了衛がはじめて世に問う書き下ろし時代小説である。その出来はと問われれば、私は嬉(うれ)しくて仕方がないと答えるしか術を知らぬ。

時は乱世――。下野国藤篠領主、藤篠光永は、奸臣(かんしん)、龍田織部介の謀略によって討たれ、17歳の澪姫(みおひめ)と小姓の小弥太は一夜にして追われる身に。これを救(たす)けるのが「黒い長羽織の男」。人は彼のことをこう呼ぶ。神子上(みこがみ)典膳(てんぜん)と。

伊藤一刀斎に神子上典膳と小野善鬼の2人の弟子がおり、一刀斎が粗暴な善鬼ではなく、高潔な典膳に印可を授けたことはよく知られている。だが、本当にそれだけであったのか。

とまれ、私が嬉しいと書いたのは、作者が相当の柴田錬三郎ファンであることが推察されるからである。たとえば「閃(ひらめ)いた白光は、しかし鮮血を招かなかった」という書きっぷりや、一刷毛(はけ)、虚無の風貌をまとった主人公の「立て。立って歩け。生きるために歩け。俺が助けるのは生きんと願う者だけだ」という台詞(せりふ)等々。柴錬の再来であるかのよう。すべての謎が解明するまで、美姫(びき)、剣鬼入り乱れての力作剣豪小説といえよう。

★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2012年11月14日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

一刀流無想剣 斬

著者:月村 了衛.
出版:講談社
価格:1,575円(税込み)

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