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春秋

オフィス街のショールームで、勤め帰りの女性が新車を眺めて言う。「誰か、こんなすてきな車に乗って、目の前にあらわれないかな」。梶山季之さんの小説「黒の試走車」の冒頭のひとこまだ。自動車メーカーのスパイ合戦を描き、発表から50年たつ今も読ませる。

▼デザイン、性能、価格で街の人々をひき付ける。ものを作る企業には不変の課題だ。スパイうんぬんはお話として、他社を出し抜くため内輪でひそかに開発し、大がかりに発表し、世間の注目を一気に集める。これが常道だった。しかしいま、半世紀前から続くこの流れとは逆のものづくりが、関心を集めているという。

▼アイデアをネット上で披露し、改善点や参考意見、出資を募る。設計図を公開し、試作や実験への協力を企業に呼びかける。そういうやり方だ。英語でオープンソース型の開発などと呼ばれる。すでに慶応義塾大学の教授が立ち上げたベンチャー企業が、この手法で電気自動車の試作車を作るなどの実例が生まれている。

▼デジタルの進化で工作機械が安くなり、ネットの普及でアイデア共有や素材調達が簡単になった。米国の新しいものづくりの隆盛ぶりをルポした「メイカーズ」の著者、クリス・アンダーソンさんは「既存の大企業も外との交流を増やす方がプラス」と説く。ワクワクするものづくりへ、自前主義の功罪を一考する時か。

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