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私を知らないで 白河三兎著

家族とは何か、意表つく展開

(集英社文庫・650円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

鬼才、久々の登場である。デビュー作『プールの底に眠る』でメフィスト賞を受賞したのが2009年、第2作『角のないケシゴムは嘘を消せない』がひっそりと上梓(じょうし)されたのが2011年。本書がまだ3作目の著者だが、ミステリーの枠を超えて、現代エンターテインメントの最前線をひた走る作家として注目されたい。

これまでの2作がそうであったように、今回もまた意表をつく物語だ。物語がどこへ向かって転がっていくのか、絶対に予想はつかない。これこそが白河三兎の特色だ。 転勤族の父親のために転校を繰り返している中学生の「僕」が横浜の学校に転入してくるところから、物語は始まる。続けて転入してきた高野君が、目立たず媚(こ)びずという転入生の鉄則を無視しているので驚くという挿話が続いていく。

この先のストーリーはあえて紹介しない。学園の日々を描く中学生小説に見せかけて、実はこれ、家族とは何か、をモチーフにした小説である。そう書くにとどめておく。群を抜く人物造形、驚異の構成、そしてとても素敵(すてき)な着地まで、まったく素晴らしい。2012年の収穫だ。

★★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2012年11月7日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

私を知らないで (集英社文庫)

著者:白河 三兎.
出版:集英社
価格:683円(税込み)

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