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道理なき大学開設不認可は直ちに撤回を

田中真紀子文部科学相が、来春開学予定だった大学3校の設置を不認可とした。大学設置・学校法人審議会の答申を覆す異例の事態だ。準備を進めていた関係者は猛反発し、3校を志願する受験生の間にも動揺が広がっている。

不認可になったのは秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大で、いずれも短大や専門学校を4年制大学に移行するケースだ。

3校を不認可とした理由は設置基準に合わないからではなく、大学の乱立を招いた設置認可のあり方そのものを見直すためだという。制度改革と個別の大学の開設可否を混同しており、尋常な判断ではない。文科相は速やかに不認可を撤回すべきである。

審議会は今月1日、教育課程や教員数、財産などの基準を満たしているとして、ほかの大学の学部増設などとともに、3校の新設を認める答申を出した。大臣はこれを尊重するのが慣例だ。

ところが田中文科相は「大学が多すぎて教育の質が低下している」「認可の判断を審議会に任せていいのか。審査がルーティンワーク化している」などと批判し、3校の開設について唐突に不認可とした。ほかの政務三役や事務方との調整もなかったという。

たしかに1990年代以降の規制緩和で大学の数は増え続け、現在では全国に783校と20年前の1.5倍に達する。多くの私大で定員割れが起きるなど現状は深刻だ。一方で私学助成金は膨らみ続けてきた。設置審査のあり方も含めて改革を急ぐ必要はある。

しかし、こうした制度改革と、個々の大学の開設とはまったく別の問題だ。来春の開学を控えて教員採用や入試の準備など進めていた3校への影響は大きい。短大からの編入を志願し、ほかの進路を考えていなかった学生は途方に暮れているという。

大臣の「鶴の一声」が、これほど理不尽な状況を生み出すことを田中氏は想像していなかったのだろうか。不認可は裁量権の逸脱だとして、訴訟を起こされる可能性もある。ここは過ちを潔く認め、不認可の撤回を決断すべきだ。

野田佳彦首相は、田中氏を文科相に起用した狙いについて「発信力に期待」などと語っていた。しかし田中氏は外相時代に政治主導をはき違えたような振る舞いが問題になり、今回も言動を不安視する声があった。案の定というべきで、首相の任命責任も重い。

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