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プラスチックスープの海 チャールズ・モア、カッサンドラ・フィリップス著

市民科学者が訴える海洋汚染

ぐるりと周囲を見渡してみよう。私たちのまわりは、プラスチック製品であふれている。ペットボトル、買い物用レジ袋、食品用ラップフィルムなどは「わかりやすい」プラスチックだ。さらに、家具、電化製品、自動車その他にもプラスチックは利用されている。プラスチックは科学技術の発展にともない、安価で、丈夫で、広い用途に使用することができる素材となった。そして私たちの暮らしと密接に結びついている。しかし、それらの行き着く先を考えたことがあるだろうか?

本書は、大量のプラスチックごみが海洋を汚染している惨状を暴いた書である。著者の一人であるチャールズ・モアは、約15年前に陸から遠く離れた太平洋の真ん中で、多種多様のプラスチックの破片がひらひらと浮き、「薄いスープ」をつくっている様子を発見した。プラスチックごみが太平洋を汚染している状況は、その後「太平洋ごみベルト」と呼ばれるようになる。モアは、海洋調査財団を組織して海洋汚染の危険を訴える市民科学者である。

増加するプラスチックごみは、単に海をおおっていくだけではない。小さなかけらとなったプラスチックごみは、動物プランクトン、海鳥、ウミガメなどの生物の「食物」となり、生態系をおびやかしている。著者は熱い想(おも)いをまじえつつも、冷静な筆致で、次々と悪影響を暴いていく。プラスチックによる便利さを享受している私たちにとっては、目を背けたくなるほどの内容であろう。しかし、これは事実である。著者は舌鋒(ぜっぽう)鋭くプラスチック生産者である企業側の体質も批判するが、同時に消費者の意識の改革も呼びかける。

化学物質の毒性に関する記述は、いまだ科学的に証明されていない分野でもあり、少々勇み足の感もある。ただ、その部分を差し引いたとしても、海洋の危機を伝える警告書として必読といえよう。海は地球の表面積の約7割を占める。私たちは、本書のメッセージを受け止め、自らの何気ない買い物ひとつが地球環境にどのような影響を与えうるか、考え直さねばならない。

(サイエンスライター 内田麻理香)

[日本経済新聞朝刊2012年10月7日付]

プラスチックスープの海―北太平洋巨大ごみベルトは警告する

著者:チャールズ・モア, カッサンドラ・フィリップス.
出版:NHK出版
価格:1,995円(税込み)

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