安倍新総裁は「決める政治」を進めよ

2012/9/27付
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自民党総裁に安倍晋三元首相が返り咲いた。ねじれ国会で野党第1党の党首の担う役割は重大であり、衆院選の結果次第で「次の首相」に就くこともある。先々を見通した柔軟かつ幅広い視点で「決める政治」を進めてもらいたい。

「政権党に戻ったみたい」。自民党本部に入ってきた女性参院議員のはしゃぎ声が響いた。総裁選に出馬した5候補の支持議員や応援団でロビーは歩けないほどのにぎわい。「さあ民主党政権打倒だ」。そんなかけ声も聞こえた。

お祭り気分もよいが、その前にやるべきことがある。先の通常国会で赤字国債発行法案が廃案になり、このままでは歳入に穴が開く。歳出抑制が始まっており、国民生活に支障が出かねない。

安倍氏は記者会見で同法案への対応について野田佳彦首相が「近いうち」に衆院を解散するとの約束を守ることが先決との考えを繰り返すにとどまった。

与党時代に賛成していた法案を人質にして政権を揺さぶる。こんな党利党略むきだしのやり方で有権者の共感を得られるだろうか。

社会保障と税の一体改革に関する3党合意の堅持を再確認し、与野党の枠組みがどうなろうとも通すべき法案は通す。そんな国会のルールづくりを提唱し、その一歩として赤字国債法案の成立に自ら動く気概をみせてもらいたい。

安倍氏は論戦で消費増税法にある景気条項を重視すべきだとの認識を示した。景気判断は重要だが、税率引き上げがあるかないかが曖昧では企業も消費者も戸惑う。真意の詳しい説明を求めたい。

総裁選の期間中に領土を巡る周辺国との摩擦が激しくなったことは党内で右寄りの安倍氏には追い風になった。会見でも「領土・領海をしっかり守る意思を示す」と力説した。

2006年に首相に就任した直後、最初の訪問国に中国を選び、前任の小泉純一郎氏の靖国神社参拝で不協和音があった日中関係の改善に努めた。タカ派的な姿勢そのままに中国と対立しようとは思っていないようだ。

ただ、日中の力関係はこの6年でかなり変化した。衆院選を意識して「自民党らしさ」を出しすぎると無用なあつれきを生む可能性もある。慎重な対応を求めたい。

総裁選の地方票では石破茂氏の後じんを拝した。党運営は簡単ではないだろう。「次の首相」へのよい試金石だ。

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