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春秋

三差路で迷った易者が通りがかりの牛遣いに道を尋ねた。意地の悪い牛遣いに「人のことが分かるんだから自分のことくらい占えるだろう」と言われた易者が答えていわく、「おっしゃるとおり占ってみたら、あなたに聞けという卦(け)がでた」。江戸時代の笑い話である。

▼迷走する政府のエネルギー・環境戦略にこの話を思い出した。さしずめ、「ぶれない」「決める」の看板を掲げた政府が易者の役回り。牛遣い役は、近いうちにありそうな選挙を左右する民意か。看板倒れの政府の苦肉の策が「民意に聞け」だったのだろう。かくして「2030年代に原発ゼロ」の道を歩み始めたが……。

▼もとより、国の行く末よりわが身の選挙を案じた決断にみえた。いや、それすら買いかぶりで、決断にもなってはいなかったのだ。原発ゼロ戦略は「参考文書」扱いにとどめ、「柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら戦略を遂行する」ときのうの閣議で決めたという。三差路に戻って考え直すということらしい。

▼断っておくが、ここで原発ゼロか維持か、の是非を問うているわけではない。三差路での沈思はむしろお勧めしたいほどだ。問題は、民意におもねって拙速に矛盾だらけの決定をすること。矛盾をつかれると一転、いともたやすく決定を覆すこと。これが偽易者なら愛嬌(あいきょう)もあるのだが、ことは一国の政府の行状なのである。

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