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バースト! アルバート=ラズロ・バラバシ著

人間の行動にひそむパターン

本書は、人間行動に潜むパターンに関する科学読み物である。著者の名前をみると、前作『新ネットワーク思考』を思い出す人も多いだろう。しかし、本書が扱うのはネットワーク科学の話ではない。

(青木薫監訳、塩原通緒訳、NHK出版・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書のテーマは、時間のなかのパターンである。人間のある活動が、どのくらいの間隔で行われるのかを調べると、その間隔が「ベキ法則」に従っていることが明らかになった。つまり、ほとんどの時間は何も起きないが、あるとき突発・集中的に活動がなされるのだ。このような現象を、「バースト」(突発)現象という。

例えば、ある人の電子メールの送信は、一日の中である期間に集中している。この時間間隔に潜む特徴は、ウェブ閲覧、印刷、ダーウィンやアインシュタインの手紙の返信間隔においても見られることが、データ解析の結果わかった。間隔がランダムではなく、ある特徴をもつということは、バーストの発生が「予測」できることを意味している。

バーストがどのような原理で生じ得るのかについても、シミュレーションによって明らかにされている。モデルは実に単純だ。やることリストを作成し、優先順位を決め、順に処理していく――それだけの仕組みで、ベキ法則に従う秩序が生じるのである。

実は著者は、前作でも似たような思考パターンを展開していた。ネットワークが成長する際に、リンク保持数の多いノード(要素)が優先的に選択されると、ベキ法則に従う構造になるという話だ。

どちらの場合も、決め手となるのは「優先的な選択」である。過剰に存在するものに制約がかかり、優先的な選択が行われると、ベキ法則の普遍的な秩序が生じる。

本書では、最新の研究が紹介され、それに取り組む科学者の試行錯誤の姿が描かれている。加えて、科学と歴史の接点を探る試みもなされている。登場するハンガリーの歴史物語は、ハンガリー出身の著者のルーツを辿(たど)る旅でもある。

他にも人々の移動や病歴に潜むパターン、プライバシーの問題、未来の予測可能性など、広範な話題が取り上げられている。それらを理解し、伏線の妙を味わうためにも、何度か読み直したい一冊だ。

(慶応義塾大学准教授 井庭崇)

[日本経済新聞朝刊2012年9月16日付]

バースト! 人間行動を支配するパターン

著者:アルバート=ラズロ・バラバシ.
出版:NHK出版
価格:2,940円(税込み)

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