サイバー攻撃でどんな被害が起きるの?

からすけ 何だか戦争(せんそう)みたいだね。サイバーってインターネットの世界のことでしょう?そこで今、どんなことが起きてるの?
社会の中枢被害だと混乱
イチ子 戦争と言っても言い過(す)ぎではないかもね。アメリカは核関連施設(かくかんれんしせつ)のコンピューターのプログラムを狙(ねら)った攻撃を「サイバー戦争」と言ってるの。コンピューターが誤(あやま)って動いてしまったら、被害はとてつもなく大きくなるからね。
からすけ 確(たし)かに危険(きけん)だね。
イチ子 これまでは陸地(りくち)や海、空が戦場になってきたけれど、今はこの3つのほかに「宇宙(うちゅう)」とインターネット上の「サイバー空間」をアメリカは新たな戦場と位置(いち)づけているのよ。
からすけ ちょっと大げさな気もするな。
イチ子 でも、2007年に北欧(ほくおう)のエストニアという国でこんなことが起きたの。サイバー攻撃を受けた結果(けっか)、銀行からお金が引き出せなくなったり、電気や水道の一部がストップしたりしたの。みんなの生活が混乱(こんらん)したこともあって、この事件(じけん)は「サイバーテロ」と呼(よ)ばれてるのよ。
からすけ なんでそんなことになったの?
イチ子 お金の出し入れは銀行の窓口(まどぐち)に行かなくてもATMという機械(きかい)でできるでしょ。最近(さいきん)は家のパソコンで振り込みもできるわ。電気や水道もそうだけど、コンピューターとネットワークを利用(りよう)して管理(かんり)できる時代になったから、そこに攻撃を加えられると大きな影響(えいきょう)があるの。


からすけ だれがどんな目的で攻撃するのかな?
イチ子 相手を困(こま)らせてやれと面白半分(おもしろはんぶん)でやっている人もいれば、何らかの目的でやっている人もいるわ。たとえば国や企業の重要な情報を盗み出そうとするスパイみたいな人ね。でも、海外から攻撃されることも多いから、攻撃した人間を突(つ)き止めるのが難(むずか)しくて、なかなか犯人(はんにん)を捕(つか)まえられないの。
からすけ そういえば財務省のホームページが攻撃されたって聞いたよ。
イチ子 そう。これまでは主に官公庁(かんこうちょう)や大企業が狙われてきたわね。大量の情報を送りつけて、コンピューターシステムをまひさせるのが手口の1つ。この攻撃にさらされるとサーバーがダウンして、ホームページなどにアクセスできなくなるの。
からすけ 迷惑(めいわく)な話だね。
イチ子 コンピューターにウイルスを仕込んだメールを送りつける手口もあるわ。実際にいる送信者になりすましている場合もあるから、気づかずにメールを開くと、ウイルスに感染(かんせん)してしまうの。その結果、相手側(がわ)に大事な情報がすっぽり抜(ぬ)き取られてしまうこともあるわ。最近(さいきん)はこの手の攻撃が増(ふ)えているそうよ。だから防衛省や警察庁(けいさつちょう)が専門(せんもん)のチームを作って、サイバー攻撃を防いでいくのよ。
予防へウイルス対策
からすけ でも自分とは関係(かんけい)ない話に思えちゃうな。
イチ子 そんなことないわ。からすけも家のパソコンで調べ物をするでしょう。インターネットを利用している人みんなにかかわる問題よ。
からすけ そういわれればそうか。
イチ子 お父さんが家のパソコンで会社とメールでやりとりすることがあるわよね。もし、家のパソコンでからすけが知らない人からのメールをうっかり開けてしまい、そこにウイルスが仕込んであったら、どうする? 家のパソコンがウイルスに感染したと知らずにお父さんが会社にメールを送ると、会社のシステムに感染するかもよ。
からすけ なんだか怖(こわ)くて使えなくなってきたよ。
イチ子 でも、必要以上(ひつよういじょう)に心配することはないわ。新型(しんがた)インフルエンザを思い出して。まずはインフルエンザにかからないように、体力づくりやうがいなどで予防することが大事だったわよね。でも、感染者が出たら、今度はその人を隔離(かくり)し、感染が広がらない対策(たいさく)がとられたわ。ネットの世界もそれと似ているの。
からすけ どうすればいいの?
イチ子 官公庁や大企業は監視(かんし)チームをつくったり、専門の監視会社に依頼(いらい)したりして攻撃に備(そな)えているけど、私たちにもできることはあるわ。まずはパソコンに入っているウイルス対策のソフトを最新のものにして、変(へん)なメールは開かずに削除(さくじょ)し、自分のパスワードを他人に教えない。それに大事な情報はきちんと別の場所に保管(ほかん)しておくといったことを普段(ふだん)から心がけたいわね。

近年は環境分野でもテロ発生
テロリズム(テロ)とは、18世紀後半のフランス革命(かくめい)で政権(せいけん)を握(にぎ)ったジャコバン派(は)が反革命派を殺害(さつがい)した恐怖政治(きょうふせいじ)を「テロル」といったのが語源(ごげん)で、政府による反対派の粛清(しゅくせい)を含(ふく)めるものでした。その後、権力者側が武装抵抗をテロと呼んだことから、反体制側の暴力手段(ぼうりょくしゅだん)をさす言葉に変わりました。日本のテロとしては、一部の軍人による1930年代の五・一五事件や二・二六事件、第2次大戦後は70年代に過激派(かげきは)が数々のテロ事件を引き起こしました。95年のオウム真理教(しんりきょう)による地下鉄サリン事件も一種(いっしゅ)のテロとされています。
海外では2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロが記憶(きおく)に新しいことでしょう。また、近年では環境保護(かんきょうほご)や動物愛護(どうぶつあいご)を名乗る団体(だんたい)が過激な犯罪行為(はんざいこうい)に走るケースもあり、環境テロ(エコテロリズム)と呼ばれています。サイバーテロは、暴力行為を伴(ともな)うわけではありませんが、情報網(もう)の破壊(はかい)などにより、社会が大きく混乱することから、そう呼ばれています。