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極端な糖質制限はNG 臓器の負担増す恐れも

 ご飯やパンなどの主食を控える「糖質(炭水化物)制限食」が糖尿病治療やダイエット目的で広がっている。メニュー作りが面倒なカロリー制限に比べて簡単で満腹感があり、継続しやすい。効果が強調される一方で「極端な制限は健康に悪影響」との指摘もある。何に気をつければよいのだろうか。

糖尿病対策で考案

糖質制限食は炭水化物に含まれる糖質を減らそうという考え方だ。簡単にいえば、主食となるご飯やパン、麺類をできるだけとらず、おかずを中心に食べる方法だ。糖質を摂取しないことで、食後に血糖値が急激に上昇するのを抑え、糖尿病の悪化を防ぐために考え出された。

減量効果があるという論文が発表され、米糖尿病学会は2年間の期限つきで食事療法として認めている。ただ、成長期の子どもや妊婦は将来の影響が不明なため、見合わせた方がよいとしている。

糖質制限食が普及した理由には手軽さもある。糖質制限は食べてはいけないものを決めるだけで済む。一方、カロリー制限では「食品交換表」などを使い、自分で食材のカロリーを計算する必要があり、長続きしにくい。糖質制限でダイエットに成功したという本が数多く出版され、雑誌でも取り上げられたことも追い風になったようだ。

糖質以外を取りすぎる可能性も

しかし、どこまで糖質を制限すればよいのか明確な基準はない。さらに、炭水化物を断つ代わりに肉類や脂質はいくらでもとってよいという極端な方法も横行した。自己判断で薬物治療を中断した結果、体調の異常を訴える例もあるという。

米ハーバード大学などは、糖質の制限は心筋梗塞や脳卒中の危険性を高めるとの調査結果をまとめた。スウェーデンの女性4万3396人の食生活と病気の発症を16年間にわたって追跡調査。糖質を減らしてたんぱく質を増やす食事が中心の人ほど、こうした病気を発症する危険性(リスク)が高まった。

国立国際医療研究センター糖尿病研究連携部の野田光彦部長は「糖質を減らしても必要なカロリーを確保するため、脂質やたんぱく質が多くなりがち。血液中の脂質が増えすぎたり、腎臓への負担が高まったりすることが考えられる」と説明する。

糖質以外を無制限に食べることは避けた方がよい。足立香代子・せんぽ東京高輪病院栄養管理室長は「大人なら、1食あたりのたんぱく質はサンマなら2尾まで、ステーキも200グラム程度に抑えるべき」と指摘する。

50グラム以下は要注意

過剰な糖質制限によって脂肪が分解してできるケトン体が増えすぎ、意識がもうろうとして病院に運ばれる例も報告されている。「1日50グラム以下だと、ケトン体が増えるとする研究もある。極端な糖質制限はしないでほしい」と、北里研究所病院の山田悟糖尿病センター長は助言する。薬物治療をしている糖尿病患者は低血糖に陥る危険もある。

では、どんな食事がよいのか。専門家が勧めるのが、穏やかな糖質制限だ。北里研究所病院の山田センター長は大人の場合、1回の食事でとる糖質を20~40グラムにすることを推奨する。目安は小さめのおにぎり1個で、食事からとる総カロリーの3~4割という。1日にすると糖質は60~120グラムに抑えられる。糖質は果物などにも含まれることを考慮した方がよい。

穏やかな制限なら健康に心配はないが、血糖値や脂質、尿素窒素などの定期的なチェックは必要だ。国際医療研究センターの野田部長は「たんぱく質や脂質のとりすぎになっていないか注意してほしい」と話す。

せんぽ東京高輪病院の足立室長は「食べる順番にも気をつけてほしい」という。オリーブ油などをかけた野菜サラダや肉魚料理を先に食べると、糖分の吸収が抑えられ、血糖値の上昇が緩やかになる。比較的早く満腹になるため、全体の量も抑えられるという。懐石料理のような食べ方が理想だ。

(吉野真由実)

ひとくちガイド

◆糖質制限食を知るには「糖質制限食のススメ」(山田悟著、東洋経済新報社)
ホームページ
◆糖質制限の詳細は「せんぽ東京高輪病院ホームページ」(http://www.sempos.or.jp/tokyo/press/press_kurashitokenko.html)

[日本経済新聞朝刊2012年9月2日付]

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