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巨大地震から人命守る対策を

東海沖から四国沖に延びる「南海トラフ」沿いで巨大地震が起きると、死者が最悪32万3千人に及ぶとの想定を内閣府が公表した。沿岸部を強い揺れと大津波が襲い、未曽有の大災害になる恐れがあるとした。

この地震が起きる確率は千年に一度程度とされ、報告書が指摘したように、過度に恐れるのは禁物だ。まれにしか起きない大津波に備えて防潮堤をかさ上げするのも費用対効果の点から現実的ではない。だが頻度が低い災害でも「想定外」としてはならないことは東日本大震災の重い教訓だ。

国は自治体や企業と連携し、人命を守ることを最優先に被害を極力抑える減災戦略を練るべきだ。想定を出しっぱなしにせず、対策を積み上げることが肝心だ。

想定によると、冬の深夜に地震が起きると被害が最も膨らみ、津波による死者が約7割を占める。多くの人が寝静まった時間帯で、避難が後手に回るためだ。

まず取り組むべきは「強く揺れたら逃げる」という意識を住民に浸透させることだ。自治体や地域の防災組織が主導して、高齢者や子どもらも安全に逃げられる避難路を定め、日ごろから訓練を重ねることが欠かせない。

津波避難ビルなど安全な避難場所の確保も急務だ。昨年の震災では高速道路に駆け上がって助かった人がいた。これまで避難場所とみなされなかった高速道路や通信施設などの土手に階段を設け、災害時に活用する手もあるだろう。

地震から数分で津波が到達する地域では、高台移転を考える集落もある。住民の総意があれば費用の一部を国が負担する仕組みを検討する必要がある。工場を移転する中小・零細企業への低利融資などの支援策があってもよい。

ほかにも、東海地震だけを「予知可能」とした大規模地震対策特別措置法の見直しや、被災地を広域から支援する体制づくりなど課題が山積する。国の財政は厳しいが、一定の財源を確保して優先順位をつけて取り組んでほしい。

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