日本のリアル 養老孟司著
食・環境を軸に価値観の変遷語る

「田んぼには肥料も農薬もいらない」とする農業や、山と川の手入れによって復活する漁業、そして千年ぶりに豊かさを取り戻している日本の自然林を対象に、採算に合う林業が実に説得的に語られている。産業論として実に面白いのである。
「農業で成功した人は、国の言うことの逆をやって自立していった人たち」であるそうだ。きっとそうだろう。農協などが強くなりすぎると、組織でメシを食う人間が政策の中心となるのだ。
あるいは大震災の後、三陸の海は「平年の倍ぐらいのスピードで生き物が育って」いるとのこと。普通は2年かかるカキやホタテが1年で収穫できそうだと説明されている。悪いことばかりではないのだ。
「国産材の値段はかつての三分の一にまで下がっており、今や国際価格と同じ」になって、どんどんマーケットに材木が出るようになったそうである。
また「家族の絆」や若者の価値観の変遷を「食卓」や「環境」を軸に語っている。たしかに環境やエコロジーへの意識は高まっているが、外界や他者への関心は低くなっている。養老孟司と4人の達人による対談集。
★★★★
(福井県立大学地域経済研究所所長 中沢孝夫)
[日本経済新聞夕刊2012年8月29日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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