エアコンや扇風機が発火 家電の事故を防ぐ注意点
▼エアコンのスイッチを入れたところ、吹き出し口から炎が出て、柱の一部が焦げた(広島県・40代女性)
▼扇風機のスイッチを入れたまま出かけたところ、出火して床やカーテンなどが焼損した(静岡県・70代男性)
独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)の製品安全センターには夏になると、全国からこうした事故の被害が次々と報告される。
特に多いのがエアコンと扇風機による事故。「2006年度から11年度までの間にエアコンで470件、扇風機で231件の事故が発生しています」と話すのは製品安全調査課長の葛谷弘之さん。エアコンの冷房機能も扇風機も、ともに主に夏に使うだけなので、経年劣化しているのに気が付かないケースや、適切なメンテナンスを怠っているケースが意外に多いという。
エアコンの事故で特に目立つのがプラグや配線のトラブルだ。「延長コードを使い、不適切な接続のまま自分で継ぎ足している場合や、電源プラグにホコリがたまったままで放置したりしている場合に発火する事故が後を絶たない」という。また内部洗浄する際、洗浄液が配線や基板に付着してしまい、発煙・発火することもあるようだ。

このほか、室外機近くに段ボールや植木鉢、ごみなどを置きっぱなしにしておくと、ナメクジや昆虫、小動物が内部に侵入する恐れもあるという。日ごろからこまめな点検や清掃が欠かせない。
最近は節電のため扇風機を使う人も増えているが、気をつけたいのは経年劣化による事故。主な原因はコンデンサーの絶縁不良やモーターの過熱など。特に夜間の就寝中や周囲に人がいない場合に事故が起きると、初期の消火活動が遅れて被害が予想外に大きくなりがち。「使用中は必ず扇風機の近くに誰かがいるようにしないといけない。また製品を使わない時はプラグをコンセントから抜いておいた方がよい」という。
秋に扇風機をしまう際にはコードが折れ曲がったり、ほこりをかぶったりしないように気をつけることも大切だ。
製品の寿命や安全を考える上で大いに参考になるのが「バスタブ曲線」だ。通常、製品事故は初期不良が原因になりがちな「初期故障期」に発生率が高く、その後はいったん落ち着く「偶発故障期」を経て、最後に寿命を終える「摩耗故障期」に再び発生率が高まる――というプロセスをたどる。
「縦軸に事故発生率、横軸に使用期間をとると、バスタブのような曲線を描くことから名前がついた」。こう説明するのは明治大学教授の向殿政男さん。だから、使っている製品がかなり古い場合、経年劣化の事故を防ぐためには、異音や異臭、熱などの「故障の前兆」が製品から出ていないか常に目を光らせていることが有効な対策になる。

製品の故障事故が多発した教訓を踏まえ、政府は消費生活用製品安全法(消安法)を改正し、09年4月から、経年劣化による事故発生を防ぐ制度をスタートさせた。製品の寿命の目安となる「設計標準使用期間」をメーカーが定め、製造年などとともに本体に明記する「長期使用製品安全表示制度」だ。対象となるのは扇風機、エアコンのほか換気扇、洗濯機、ブラウン管テレビも加えた5品目。

「使い方や環境などによって条件は異なるが、設計標準使用期間を過ぎたら、寿命を迎えつつあるという目安だと考えることが大切。点検や部品交換なども検討した方がよいでしょう」。葛谷さんはこうアドバイスしている。
(編集委員 小林明)
[日経プラスワン2012年8月25日付]