春秋

2012/8/11付
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ロンドン五輪もいよいよ終盤だ。サッカーや体操、卓球、アーチェリー、フェンシングと今大会はチームでのメダル獲得が続く。水泳のメドレーリレーもそうだ。「全員で戦った結果」と口々に話す選手たちは、大舞台で重圧を力に変えるすべを身につけたのだろう。

▼今日は「ガンバレの日」。1936年のこの日、ベルリン五輪でNHKアナウンサーが「前畑がんばれ」と連呼したことにちなんでいる。水泳200メートル平泳ぎに出場し、日本人女性初の金メダルに輝いた前畑秀子さんに対する期待は相当なものだった。「ドイツに向かう船中から身投げしたくなった」と後に語っている。

▼過度な国民の期待ほど、やっかいなものはない。24歳で早世した人見絹枝さん、自ら命を絶った円谷幸吉さんと、かつての五輪メダリストの人生には栄光と苦悩が交錯する。ロンドン五輪をテレビ観戦していても、日本人とは違ってニコリともしない一部の外国選手の表情の裏に国家という存在を感じるのは気のせいか。

▼円谷さんと一緒に半世紀前の東京五輪に出場したのが君原健二さんだ。君原さんは本紙に掲載中の「私の履歴書」で「走ることでランナーという作品をつくろうという思いだった」と書いている。練習場はアトリエ、大会は展覧会である。自分を冷静に見つめて精進することはアスリートだけに必要な資質ではあるまい。

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