2019年2月20日(水)

大使たちの戦後日米関係 千々和泰明著 外交の担い手の影響力を分析

2012/8/7付
保存
共有
印刷
その他

戦後日米関係を検討した著書、論文は実に豊富であるが、両国の歴代大使に焦点をあて、彼らの役割を比較・検討した研究はほとんどなかった。本書は日米の資料、関係者へのインタビューをもとに、日本の16人の駐米大使、アメリカの13人の駐日大使の「大使外交」を実証的に分析した労作である。

(ミネルヴァ書房・6000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(ミネルヴァ書房・6000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書の議論を通じて印象的なことはやはり、アメリカの駐日大使の政策的な影響力の大きさである。本国に対して日本の再軍備よりも経済再建を説くアリソン、憲法改正を前提とせずに旧安保条約の全面改定を提議したマッカーサー2世、日米「イコール・パートナーシップ」を演出したライシャワー、「大物」大使のはしりであるマンスフィールド、「ミスター外圧」の異名をとったアーマコスト、普天間基地返還に合意したモンデールなど、彼らの役割にはことのほか大きなものがあった。

これに対して日本の駐米大使は、沖縄返還交渉に関わった下田武三、日米経済摩擦の対処に奔走した「戦艦」牛場信彦、大河原良雄、松永信雄、さらには冷戦後の栗山尚一、斉藤邦彦、9・11事件後の柳井俊二、加藤良三などそれぞれが独自の存在感を示し、懸案の処理にあたったが、日米関係に与えた影響は米大使に比べると限定的であった。それは著者が指摘するように、日米のパワーの差を映し出したものであるととともに、日本の首相や外相が対米関係の重要さ故にこれに直接関与したのに対して、超大国アメリカは対日関係の処理を出先大使館に委ねることが多かったからである。

日本の駐米大使は外交官の事実上の最高位であるが、アメリカの駐日大使は国務省の日本・東アジア専門家のみならず、学界や政財界の出身者が就くことが多かった。著者は近年シーファー、ルースなど「政治的大物」ではない駐日大使が登用されたことにより、日本の駐米大使が日米関係の重要性を体現する役割を担う必要が増大していると述べ、幅広い分野からの大使起用を提案する。

国際関係を担うアクターの多様化にもかかわらず、外交の首尾は依然として大使に依拠するところが大きいことを痛感させられる一冊である。

(立教大学教授 佐々木卓也)

[日本経済新聞朝刊2012年8月5日付]

大使たちの戦後日米関係: その役割をめぐる比較外交論、1952~2008年 (国際政治・日本外交叢書)

著者:千々和 泰明.
出版:ミネルヴァ書房
価格:6,300円(税込み)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報