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クラウド時代の著作権制度作りを

スマートフォン(高機能携帯電話)の普及により、インターネットから簡単に音楽や映像を取り込めるようになった。だが、それが違法なソフトだった場合、個人にも刑罰が科されるという改正著作権法が先月、国会で成立した。

他人の著作物を無断で複製すれば著作権法違反になる。しかし、ネットから簡単にダウンロードできる技術ができた今、むやみに罰則を強化するより、消費者が安価にソフトを買える仕組みを作るほうが重要ではないだろうか。

制度がネット配信阻む

その仕組みを考えて世界的に成功したのが米アップルだ。ネットから楽曲などをパソコンに取り込み、携帯端末で手軽に楽しめるようにした。一方、従来のCD販売などを守ろうとした日本の家電メーカーやソフト会社は、ネット配信に出遅れる形となった。

日本が遅れたもう一つの要因が厳しい著作権法の縛りだ。検索サービスは米グーグルが先行したが、日本では検索をするために大量のデータを一括して機械に読み込ませるのは違法な複製とみなされた。2年前の法改正で合法となったが、事業には出遅れた。

さらに大量のデータをネットで共有できる「クラウドコンピューティング」の技術が登場したことで、状況はさらに複雑になった。

著作権法は無断で複製することを禁じているが、クラウドを使えば、いちいち複製しなくても情報を見ることができる。複製行為がなければ、違法な複製という行為も存在しない。そうした新しい技術に著作権法をどう合致させていくかが課題といえる。

実際、新しいクラウド技術が従来の法制度とうまくかみ合わず、消費者が最新のサービスを受けられないという状況も生じている。一例がアップルが始めた「iクラウド」というサービスだ。

このサービスでは個人が購入した音楽などをアップルのサーバーに預け、様々な端末から利用できる。その中にはアップルがネット配信している作品とだぶるものもあるため、それで置き換えられる仕組みを設けた。ところが日本では著作権法で認められる私的複製の範囲を超えるとされた。

放送で受信したテレビ番組をネットで転送すれば別な場所で見ることができる。そのための装置が開発されたが、日本では事業者がそうした転送サービスを提供すれば著作権法違反になるという最高裁判決が下っている。

日本の著作権制度をクラウド時代に合うよう改め、消費者に使いやすいネット配信の市場を広げるには、次のような3つの視点が必要だ。「守るより流通を」「複製でなく閲覧を」「罰則より教育を」である。

「守るより流通」というのは、著作権は尊重するが、消費者による複製は一定範囲で自由にできるようにすることだ。利用者が増えなければ市場は広がらない。ソフトの単価も安くし、代わりにデジタル技術を駆使して利用料を確実に徴収することが重要だ。

「複製でなく閲覧」というのは、複製した場合に著作権料を徴収するのではなく、消費者が見に来た場合に「閲覧料」を取る仕組みを作ることだ。これまで録音や録画を行う機器や媒体に料金を課したが、クラウド利用が広がればこうした手段は時代遅れとなる。

罰則より教育が重要に

今回の法改正では一部議員による修正を十分に審議せず、違法ダウンロードに罰則が設けられた。個人の行為に刑罰を科すことにはもう少し慎重であるべきだったといえよう。海外にも罰則はあるが、10月の改正法施行後は恣意的な運用がないように願いたい。

「罰則より教育」が重要なのは、違法ダウンロードが増える背景に「ネットは何でも無料」という消費者の風潮があるからだ。著作物を利用するには相応の対価が必要だということをきちんと教育していく必要があろう。

今回の著作権法の改正を受け、日本のレコード会社の中にもネット配信の複製制限を緩め、携帯端末やパソコンなど様々な装置で楽しめるようサービスを改めていこうという動きがある。前向きな対応として評価したい。

これからは電子書籍端末やスマートテレビなども広がってくる。そうなれば出版物や映像のネット配信市場も拡大が期待される。日本は米国や韓国に比べネット配信では出遅れたが、消費者が使いやすい閲覧の仕組みを作れば、新たなコンテンツ市場を生み出すことができるに違いない。そのためにもクラウド時代に合った法制度の構築が急がれよう。

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