消費者が求める食品表示に
いくら詳しい情報を羅列しても、肝心の消費者にわかりにくければ意味がない。菓子や冷凍食品、調味料などの包装に印刷された「食品表示」のことである。
今の食品表示は主に食品衛生法、日本農林規格(JAS)法、健康増進法の3つの法律で定められ、義務付けられたものと任意のものが混在している。表示ルールを見直そうと、消費者庁が有識者の検討会で議論を進めている。
だが、検討会では表示項目の拡大や義務付けを求める消費者団体側と、任意の表示にとどめるべきだとする食品業界側が対立し、とりまとめが難航している。
大切なのは、消費者が食品を選ぶ際に必要な情報をわかりやすく表示することである。限られたスペースにあらゆる情報を載せるのは不可能だ。文字が小さくなって読みにくくなるのも避けたい。
表示項目を精査し、優先順位を付けるべきだ。深刻な健康被害をもたらすこともありうるアレルギー物質や、食中毒に関わる賞味期限などの情報は優先して載せなければならない。
同庁の素案では、原料の原産地表示などの原則義務化が盛り込まれている。だが、消費者が原料の原産地を知りたいか否かは商品の種類によってかなり違う。まずは消費者が求める情報を把握し、コストや手間を検証したうえで現実的な答えを出すべきだ。
遺伝子組み換え原料の表示義務についても慎重に検討する必要がある。今は豆腐や納豆といった食品に限られている表示義務を食用油などにも広げるべきだという声が消費者から出ている。一方で、表示義務の対象を広げれば価格上昇を招くなどの懸念もある。
消費者自身が、遺伝子組み換え食品の安全性などについての基礎知識を身につけられるような食育も大切だろう。
食品業界団体や企業も、顧客電話相談やホームページ、店頭、工場見学などで積極的に情報を公開し、消費者との間に信頼関係を築くことを忘れてはならない。