2019年2月20日(水)

「明らかに人災」断定 国会原発事故調 最終報告書(2)
<初動対応>東電も官邸も混乱

2012/7/6 3:30
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報告書は事故発生後の首相官邸や東電の混乱ぶりを浮かび上がらせた。

「おまえ、海水注入は」

「やってますよ」

「おいおい、やってんのか。止めろ」

「何でですか」

「おまえ、うるせえ。官邸がもう、グジグジ言ってんだよ」

3月12日夜、福島第1原発で陣頭指揮をとっていた吉田昌郎所長の電話が鳴った。相手は首相官邸に詰めていた武黒一郎東電フェローだった。

淡水がなくなり、注入できなくなったため、炉心溶融の危機が迫っていた。吉田氏は1号機への海水注入に踏み切ったが、再臨界の可能性を懸念した菅直人首相に官邸で問い詰められた武黒氏は、現場に中断を指示。耳を疑った吉田氏は受け入れたふりをして、独自の判断で注入を続けた。

吉田氏は事故調の聴取に「指揮命令系統がムチャクチャなんですよ。官邸から電話がかかってきて、十分な議論ができなかった。電話で『四の五の言わずに止めろ』ですから」と振り返った。

混乱は事故直後に始まっていた。11日夕、官邸が東電から電源喪失などの通報を受けた後、原子力緊急事態宣言を出すまで2時間以上を費やした。海江田万里経済産業相は首相に、宣言発出の了解を求めたが、首相は「本当に全部(電源が)落ちたのか」「なぜこんなことになったのか」と繰り返し質問し、発出を認めなかった。

この間に炉心の損傷が始まり、電源喪失で多くの計器や通信機器が使えなくなった。報告書は発出の遅れが「避難指示などが遅れる原因の1つとなった」とみている。

報告書は東電が政府に福島第1原発からの「全面撤退」を伝えたとされる問題に関して、東電は必要な人員を残す「退避」と伝えており「官邸の誤解」だとの見解を示した。ただ清水正孝社長が官邸の意向を探るかのような曖昧な連絡をしたことが問題の根源とも指摘した。

「全員撤退」と聞いて、15日早朝に東電本店に乗り込んだ首相は「このままでは日本が滅亡だ」「撤退などあり得ない。命懸けでやれ」「逃げてみたって逃げ切れないぞ」「60歳になる幹部連中は現地に行って死んでもいいんだ。俺も行く」と激しい口調でまくし立てた。

菅氏は「全面撤退を阻止した」と主張するが、報告書は「菅首相が全面撤退を阻止したという事実は認められない」と指摘。現場を預かっていた吉田氏は聴取に「現場は逃げていない」と悔しさをにじませた。

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国会原発事故調 最終報告書

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