2019年9月17日(火)

叛鬼 伊東潤著 下剋上貫いた武将描き出す

2012/6/21付
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(講談社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(講談社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

いま、いちばん直木賞に近い歴史作家・伊東潤が最新作の主人公に選んだのは、生涯、叛鬼(はんき)として下剋上(げこくじょう)を貫いた長尾景春である。

関東管領・上杉顕定を平らげたのを振り出しに、はじめこそ、正義と孝心の相克に苦しみながら、その後は、まったくブレることなく覇道を突き進んでいく。その姿は2011年、吉川英治文学新人賞候補、「本屋が選ぶ時代小説大賞」受賞、同年下期直木賞候補となった作者のよう。

しかしながら、豪腕作家といわれ、重量級の戦国ものの書き手といわれてきた作者は、次第に読みやすさや、作中人物の心の襞(ひだ)に分け入る術に長じ、もはや只者(ただもの)ではない。

兄とも慕っていた太田道灌に向って、景春が断腸の思いで、「民と国衆の意を汲(く)んだ政道を行う者こそ、人の上に立つべきであり、そうでない者を斃(たお)すことは、天道に反することではありませぬ」と問う時、或(ある)いは景春は泣き濡(ぬ)れた鬼であるかもしれない。

そして彼の行動は、北条早雲ら、新たな時代の胎動を導き出していく。作者が下剋上の名を借りていっているのは、腐り切った現代の政治に対する一言、覚醒せよに他ならない。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2012年6月20日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

叛鬼

著者:伊東 潤.
出版:講談社
価格:1,680円(税込み)

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