2018年11月15日(木)

中日友好随想録(上・下) 孫平化著 多彩な人々との交流と対話の記録

2012/6/11付
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かつて日中間に国交がない時代、「知日実務家の三羽烏(がらす)」と呼ばれた中国人がいた。孫平化、肖向前、王暁雲である。孫平化は1972年にバレエ団を率いて来日し、田中角栄首相の訪中を導いた。

(武吉次朗訳、日本経済新聞出版社・各4800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(武吉次朗訳、日本経済新聞出版社・各4800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

84年から97年の他界まで続く交友録は、田中との再会から始まる。ロッキード事件で係争中の田中は、別れ際に握手を交わしながら「面壁十年の覚悟だ」と語った。

日本との交流は極めて広い。鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登、宇野宗佑、海部俊樹、宮沢喜一、村山富市、羽田孜、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗などの総理クラスから、官界、経済界、大学、研究者、文化人、出版社、新聞記者、宗教家、労働組合、学生にまで及ぶ。

政界だけでも、竹入義勝、伊東正義、二階堂進、宇都宮徳馬、桜内義雄、西園寺公一、早坂茂三、矢野絢也、小沢一郎、岡田春夫、河野洋平、小坂善太郎、古井喜実、後藤田正晴、渡辺美智雄、石田幸四郎、野田毅、林義郎、水野清など数え切れない。

伊東、竹入、宇都宮、古井らとは何度でも訪ね合い、親交を深めていく。第三代中日友好協会会長に任命された孫は、「中日友好に残りの人生を捧(ささ)げたい」と誓った。

全日空社長だった岡崎嘉平太の墓参りでは、「涙がとめどなく流れた」。岡崎は、中国が戦争賠償請求を放棄したことに恩を感じていた。「徳をもって徳に報いるべきであり、中国の国づくりを強力に支援すべきだ」という岡崎の遺志を継いで、息子たちは遺産を相続せずに財団を創設し、アジアからの留学生を支援した。

随想録の内容は政治経済に限らず、旅行、大学、出版、芸術、料理、ゴルフなど縦横である。歴史教科書や靖国神社などについても、率直に日本と意見を交わしている。「間違っていると思ったことは伝えなければならない。そうでなくて、真の友好などあり得ようか」。

光華寮判決への批判をはじめ違和感を覚えるところもあるが、日中関係が難しいときこそ、人のつながりが活(い)きてくるのは確かだろう。周恩来、廖(りょう)承志の遺志を体現し、往来と対話を重ねた記録である。

(中央大学教授 服部龍二)

[日本経済新聞朝刊2012年6月10日付]

中日友好随想録 〈上〉―孫平化が記録する中日関係

著者:孫 平化.
出版:日本経済新聞出版社
価格:5,040円(税込み)

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