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製造業の空洞化に歯止めをかけるために

日本経済を支えてきた製造業が試練に直面している。経済の血液ともいえる電力に供給不安が生じ、一方で円高が大幅に進んだ。

政府が5日公表した「ものづくり白書」も、国内の製造業基盤の劣化に警鐘を鳴らしている。

白書で実施したアンケートによると、今後海外投資を増やす際に、「国内従業員数が増える」と答えた企業が23%にとどまったのに対し、「減る」と予測した企業は45%に及んだ。

意外かもしれないが、従来はこの増減比率が逆だった。海外に投資し、現地工場を立ち上げると、そこに供給する部品などをつくるために、国内の雇用も結果的に増える事例が多かった。それが空洞化を食い止めてきた。

だが、今後は楽観できない。白書は、海外投資が国内の従業員数や投資に負の影響をもたらす恐れが強まっていると指摘した。

足元の情勢を見れば、製造業の主軸ともいえる自動車産業でも、昨年度ついに海外投資が国内投資を上回った。企業が伸びる市場に投資し、拠点の最適配置をはかるのは当然だが、政府の不適切な政策で競争環境がゆがみ、雇用や拠点の海外流出が加速してしまう事態は避けなければならない。

製造業の特徴の一つは、賃金の相対的な高さだ。製造業就業者の平均年収は466万円(2009年)で、サービス業の1.5倍に当たる。製造業の規模縮小は、日本社会が比較的収入の良い雇用機会を失うことにほかならない。

世界に目を転じると、一時は金融などに傾斜した米英でも、製造業を再評価する機運が高まっている。アジア各国はもっと積極的だ。例えばタイの一部の地方では新設工場について、8年間は法人税を免除し、続く5年は半減するという大胆な策を打ち出した。

世界が工場や拠点の誘致を競うなかで、日本政府はその現実に鈍感すぎないか。貿易自由化の遅れを取り戻し、高すぎる法人税や膨らむ社会保障費の企業負担分を軽減することで、ビジネスしやすい環境を整える必要がある。

財政が厳しいからといって、雇用を生む企業の声に耳を傾けなければ、日本の拠点を閉めて丸ごと外に出て行く「根こそぎの空洞化」を招きかねない。

一方で企業も何を外に出し、どんな機能を国内に残すのか、冷静な見極めが必要だ。それが各社の勝ち残り戦略にもつながる。

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