リアルタイム・マーケティング デイヴィッド・ミーアマン・スコット著 情報活用めぐる企業の動き描く

2012/6/5付
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2009年ころから米国のベンチャーキャピタリストの間では、「モバイル」「ソーシャル」「リアルタイム」が成長するビジネスを考えるためのゴールデントライアングルと言われてきた。その後のiPadのような情報端末の普及や、ツイッター、フェイスブックの勢いを見ていると、当時の予測が正しかったと改めて感じる。人間がモバイル端末を使ってソーシャルネットワークでつながった時、リアルタイムの情報が重要になるのは当然の帰結だろう。誰もが、いつでもどこでも、口コミで情報を発信できる時代、企業は必然的にこうした情報へのリアルタイムな対応を迫られる。

(有賀裕子訳、日経BP社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(有賀裕子訳、日経BP社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

ソーシャルやモバイルに関して解説した書籍は数多いが、リアルタイムを焦点に論じた考察は少ない。本書は、リアルタイム情報に注目し、企業がどのように活用すべきかに焦点を当てている。

著者は、リアルタイム情報の重要性を様々な事例を用いて力説する。うまく活用できずに窮地に陥る企業、チャンスをつかむ企業や個人が数多く描かれる。リアルタイムコミュニケーションには「発想」が重要だと著者は指摘する。この発想とは、同じ情報でもリアルタイムに対応するだけで付加価値を与えられることを指す。実際にはこの発想ができず、チャンスを逃す企業の方が多い。著者は、企業が「最高リアルタイム・コミュニケーション責任者」という新たなポストを置くべきだとまで提案している。

リアルタイム情報活用のためのツールやフレームワークの紹介もあり、本書は企業のマーケティング担当者の教科書としても読める。ソーシャルメディアの活用法を、すべてリアルタイムのコミュニケーションという視点から考察し直している点は、ソーシャルメディアを理解したつもりになっている企業にとって、新鮮だろう。

中東の民主化や東日本大震災の際に用いられたソーシャルメディアの本当の価値も、情報のリアルタイム性だった。企業だけでなく政府や個人も、リアルタイムというキーワードからソーシャルメディアの本質を考えてみるべきかもしれない。

(富士通総研主任研究員 湯川抗)

[日本経済新聞朝刊2012年6月3日付]

リアルタイム・マーケティング 生き残る企業の即断・即決戦略

著者:デイヴィッド・ミーアマン・スコット.
出版:日経BP社
価格:1,890円(税込み)

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