希土類少女 青柳碧人著
「レアメタル産む少女」の切ない話

ガドリニウム、モリブデン、ジスプロシウム……。あまり聞き慣れない元素名だ。それら希少な金属、いわゆるレアメタルは、現代日本のエレクトロニクス産業には不可欠な物質である。
そこに注目した本書の設定は、それがなんと日本の少女の身体から産出されるという「レアメタル生成症候群」。
鉱物資源の少ないわが国では、海外からの輸入に頼っているわけだから、まことにめでたい現象のように思える。
が、この病にかかった少女は25歳までに夭折(ようせつ)する運命にあり、産出される物質の貴重さもあって、施設に隔離され徹底的な管理を受けるのだ。
かなりエロチックな場面から始まっているので、男性の夢見る「少女」に鉱物資源価値を付与し、ますますモノ化、お宝化を促進する萌(も)え話かと思いきや、特殊隔離施設へ物語の焦点が移ると一転して透明感漂う、なんとも切ない話へ転じていく。
主人公はレアメタルの中でもさらに希少な、希土類元素(レアアース)を産出する娘で、死生観や恋のエピソードが、金属元素をめぐる逸話も交えながら展開し、非常に味わい深い。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2012年5月30日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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