2018年12月14日(金)

春秋

2012/5/12付
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アンコエラン(支離滅裂な人々)やフュミスト(冗談好き)たち。19世紀末のパリで花開いた大衆文化は、そんなふうに呼ばれるとがった若者が先導したという。短い期間に、今日まで影響を与えるデザインやアートが次々に生まれた。

▼企業家らは飲食店を開き、若者が詩や音楽を披露する場を用意した。いま都内で開催中の「陶酔のパリ・モンマルトル」展は、当時のキャバレーの内装を一部再現しポスターなどを飾っている。権力者の風刺画も盛んに描かれた。色とりどりに髪を染めた踊り子。それを見に来る上流階級。わい雑さが人を呼んだ。

▼自由で活気ある街が世界から才能ある若者をひきつけ、彼らが街の生活を描くことで、今で言う情報発信を担う。これが文化・観光大国フランスの土台を築いたのは間違いない。第2次大戦後の米国も似ている。ヒッピー文化の興隆で自由と平等を求める志が育ち、デジタル界での世界企業輩出につながっていく。

▼いずれもお上が旗を振り、税金で育てたわけではない。大人がまゆをひそめるような人と場が、次代の芽をはぐくんだ。今の日本ならさしずめ秋葉原や原宿、自在に作品を公開できるネット空間か。文化、観光、起業。どれも成長の要だ。その成否は、若者への懐の深さにもかかっているのではないか。

(12・5・12)

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