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昆虫の記憶による網膜貯蔵シェルター、及びアンテナ 清水アリカ著

斜めからの視点を粋な言葉で

1990年、小説『革命のためのサウンドトラック』で颯爽(さっそう)と登場した清水アリカは、2010年に亡くなったが、1年後に『清水アリカ全集』が出た。清水が残したすべての小説と小説のためのメモを収めた「小説全集」だった。

清水はけっして文章を量産するタイプの作家ではなかったが、小説以外の文章も多くあった。エッセイ、書評、サブカルチャー論など。本書はそうしたタイプの文章を集めている。清水アリカという作家の、言葉への距離感が、小説とは違った形で示されていると思う。

なかで面白かったのは、競馬をめぐる文章である。量も結構、ある。いろんな媒体に競馬に関するあれこれを書いていることを、私は知らなかった。たとえば、「結論を言ってしまえば、香港競馬はただ単にギャンブルである。それも剥き出しのギャンブルだ」。

風景やモノを斜めから眺めるが、それを書きとめる言葉は、相変わらずカッコいい。「世界」を「磁気を帯びた一枚のディスクのよう」に捉える感性は、いまでも魅力的だ。最晩年の、入院中の断片的な言葉も収録。

★★★★

(批評家 陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2012年4月25日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

昆虫の記憶による網膜貯蔵シェルター、及びアンテナ

著者:清水 アリカ.
出版:月曜社
価格:1,890円(税込み)

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