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世界で食肉争奪、どう戦う?生産から関与、農家支援も

日本ハム社長 竹添昇氏に聞く

そこが知りたい

新興国の所得水準の向上や人口増を背景に、食料品の争奪戦が世界中で起きている。穀物や食肉の国際価格が上昇傾向にあり、食品メーカーの事業展開にも影響が大きい。これにどう対応していくのか。食肉加工の国内最大手、日本ハムの竹添昇社長に聞いた。

――世界規模で食肉の需要が拡大している。

「世界の消費量は2020年まで年平均で2%程度の成長が続くとみている。一方で、生産量の増加はそれに追いつかない。世界で消費されている肉は牛肉が2割強、豚肉が4割弱、鶏肉が4割という割合で、伸びているのは豚肉と鶏肉だ。どちらも中国での需要拡大がけん引している」

――材料確保が難しそうだ。

「争奪戦はすでに激しい。国内外の食品メーカーが豚や鶏を生産する拠点を囲い込み、安定調達先の確保に動いている。そう遠くない将来、食肉が不足する局面が間違いなく来る」

「そうした状況をにらみ当社は牛、豚、鶏とすべてについて生産、加工、販売の一貫体制をとるようにしている。海外でも同じ。豪州で牛、米国では豚の生産を始めた。鶏は現在、加工だけだが、今後は海外でも生産にまで手を伸ばすことを考えたい。そうした海外拠点からは日本への材料供給だけでなく、欧州や中国市場などへと輸出も増やす。海外売上高は2011年3月期で連結売上高の約7%だが、3年後には2桁台に乗せる」

――人口が減る国内の需要は今後も期待しにくい。

「消費量は頭打ちだ。一方でメーカーの数が多く価格競争も激しい。当社は国内最大手だが食肉のシェアは2割にすぎない。提案型の営業を強化して3割までシェアを高めたい」

「将来的には業界再編もあり得る。複数のメーカーが同じ地域に生産設備を持つことも多く、業界全体で設備能力は余剰ぎみ。(国内メーカー同士の事業統合など)再編に向けた準備・検討も必要だろう」

「食肉確保のため、畜産農家との関係も強める必要がある。製品の販売単価が下がる一方で、食糧高の影響で飼料価格が高騰している。経営が厳しい農家も出てきており、そういう農家からは経営を引き継いだり、長期契約を結んだりして、支援していく」

――福島第1原子力発電所の事故を受け、食の安全に注目が集まっている。

「生産、加工、販売を一貫してできる当社の強みを生かし、消費者の役に立てる。放射性物質に関しては食肉の検査体制を強化し、飼料や水からスクリーニング検査を欠かしていない。出荷、流通まであらゆる段階で検査体制がきちんとしていることを説明し、消費者の信頼を高めたい」

<聞き手から一言>

日本ハムは社名の通りハムとソーセージで創業した。だが今の収益構造は食肉事業に依存する。2011年3月期でみれば売上高の6割、営業利益の7割が食肉。業績は市況に左右されやすい。実際、12年3月期は市況低迷で一転して営業減益となったようだ。

今後の食肉争奪戦をにらめば自社生産の強化が課題となる。だが安定的に業績を拡大するには売上高、利益とも食肉事業の半分にとどまるハム・ソーセージなどの加工食品事業も重要だ。両事業で生産設備や販売体制の拡充にどの程度の投資を向けるか。5月に発表する中期経営計画で、注目される点だ。

(丸山修一)

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