秀吉と海賊大名 藤田達生著 戦国史の意外な実相

2012/4/12付
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(中公新書・760円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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戦国時代の歴史に海賊たちが大きな役割をはたしたことは、よく知られていよう。九鬼水軍が、村上水軍が、戦局をうごかした。戦国時代びいきの歴史好きも、よくそんな話をかわしあう。しかし、彼らのになった歴史的な意味を、きちんと把握している人は、すくなかろう。そこがあざやかにえがきだされた本書の刊行を、多としたい。

話の焦点は、瀬戸内海、なかでも伊予と伊予沖にしぼられる。伊予河野氏の海賊衆である村上氏に、光はあてられる。愛媛生まれの著者が、郷土愛にかりたてられて書いた本だと思われようか。

だが、そこにこだわることで、戦国史の意外な実相も見えてくる。たとえば、本能寺の変。明智光秀は、何をどうあせっていたのか。羽柴秀吉にとって織田信長は、どういう人だったのか。その答が、新鮮な姿でたちあらわれる。戦国時代通をもって任じる人であるならば、見すごせないところであろう。

大名間のかけひきをえがいたところも、奥が深い。海賊史にかかわる通説をのりこえる指摘も、たくさんある。中近世移行史の新しい展望も、おそわった。テーマは小さいが、ひろがりのある一冊。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2012年4月11日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

秀吉と海賊大名 - 海から見た戦国終焉 (中公新書)

著者:藤田 達生.
出版:中央公論新社
価格:798円(税込み)

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