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原発に逆風、鍛造品の活路は? 樹脂と融合、新事業探る

日本製鋼所社長 佐藤育男氏に聞く

そこが知りたい

東京電力福島第1原子力発電所の事故は、世界各国のエネルギー政策に大きな影響を与えている。原発市場の成長に活路を見いだしてきた企業は、戦略の練り直しを迫られている。炉心を覆う圧力容器向けの素材で世界シェア8割の日本製鋼所もその一つだ。どう経営をかじ取りするのか、佐藤育男社長に聞いた。

――原発事故の影響は。

「『ルネサンス』とまで言われた原発ビジネスが一気に斜陽になってしまった。我々も減速を予測せざるをえない。事故前にたてた2013年3月期の原子力・火力発電設備向け事業の売上高見通しは約700億円。12年3月期は500億円程度で着地しそうだが予想を下回る水準だ。来期も200億円から250億円の下振れはあると思う」

――需要は回復するか。

「国内では原発の稼働停止や新設凍結が当分続く。原子力・火力事業の国内売上高比率は今の4割から、中期的には2割程度に落ちるだろう。伸ばすのは海外だが、そこでも見通しは慎重にならざるをえない。米国は2月、34年ぶりに原発の新規建設を承認したが、本当にビジネスに寄与するのはその次に控える約30基の原発。大統領選挙も控えており、原発政策がどうなるのか注視している」

「中国では20年をメドに50基程度の新設が期待されている。安全性を高め先進型の原子炉の開発も進んでおり、我々の高付加価値素材が採用される余地がある。あとはフランスで進む加圧水型軽水炉(PWR)向け蒸気発生器の交換。これが今後3年間で十数案件あり、すべてうちが取るつもりで営業を進めている」

――「原発頼み」に危うさはないか。

「今後、火力発電の分野を伸ばしたい。大型蒸気タービン用の軸が主体だが、高効率のガスタービンにも参入する予定だ。プラスチック材料とフィルムの製造機械も調子がいい。自動車の軽量化で高機能樹脂への需要が高まっている。スマートフォン(高機能携帯電話)の液晶パネルに使うフィルムの製造機械は国内シェアが4割で1位だ」

――中長期の成長戦略をどう描く。

「今、考えているのは大型鍛造品主体の北海道・室蘭製作所と、樹脂やフィルムの製造機械を手掛ける広島県・広島製作所の強みをどう結びつけるか。互いの融合で事業の領域を広げられればと思っている」

「エネルギー分野で素材の観点からトップになろうという基本発想は変わらない。特に室蘭でつくる鍛造品工程にはデジタル化されていない部分が多くあり、他社は簡単にまねできない。日本でのものづくりを守る意味でも、室蘭での研究開発投資は今後もきちんと継続していく」

 1972年北大工卒、日本製鋼所入社。05年取締役、09年から現職。63歳。

<聞き手から一言>室蘭の能力増強、需要前提崩れる

原子炉の圧力容器には、熱した合金を高圧でたたいて強度を高めた鍛造品を使う。日本製鋼所の室蘭製作所は、重量600トンを超える大型鋼を鍛造加工できる世界唯一の工場。能力を増強した直後に原発事故が起き、需要の前提は崩れた。

2012年3月期は連結売上高が7%増の2270億円、営業利益が23%減の220億円を予想する。原発事業が厳しい割に業績が底堅いのは、樹脂用機械などをつくる広島製作所が好調だから。2つの製作所が蓄積してきたノウハウをどう融合させるのか。「まずは人事交流を進める」という佐藤社長の手腕が試される。

(中西豊紀)

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