2019年6月16日(日)

人材競争 国境なく 秋入学、「内向き」変える好機に

2012/2/21付
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渡米した日本人留学生でつくる「米国大学院学生会」が昨年12月、早稲田大学で開いた留学説明会。「推薦状は誰にもらうのか」「英語力はどの程度必要か」。詰めかけた学生約150人は次々と質問を投げかけた。

■単位互換に壁

文部科学省によると、海外留学する日本人学生数は2004年をピークに6年連続で減少。直近データの09年は約5万9千人だった。「内向き」とされる若者たち。説明会場の熱気からは感じられないのに、なぜか。

「帰国後、留年する可能性が大きい」「助言教職員の不足」……。国立大学協会(東京)が06年、各国立大に日本人学生の留学の障害を尋ねたところ、目立ったのは大学側の体制不備。

一例が、他大学で受講した授業科目の単位を認定する単位互換制度だ。米国の大学では、全ての科目に内容やレベルに応じた共通コードを付け、単位互換を容易にするナンバリングが普及している。実施済みの国際基督教大の日比谷潤子学務副学長は「海外の大学との"共通言語"」と言うが、日本の導入率は6.7%(09年)にすぎない。

■教員の意識カギ

問題は大学教員にもある。「教授が留学に反対しているが、どうしたらいいか」。米国大学院学生会代表で、東京大卒業後、米マサチューセッツ工科大大学院を修了した小野雅裕さん(29)は、学部生からこうした相談をよく受ける。

「自分の研究成果を追い求めるため、優秀な学生が流出するのを嫌う教授は少なくない」。小野さんは指摘する。

高度な人材育成のため海外経験を積ませる取り組みは、世界的な潮流となりつつある。東大研究所などの助言役を務める日立製作所の小泉英明フェローは「日本の大学教員は国際化への危機感が薄い。世界を見据えた教育政策が必要だ」と訴える。

今月10日、東京都内で日米の大学関係者が集まったシンポジウム。米シンクタンク、国際教育研究所のアラン・グッドマン所長は「世界を理解するには、米国も若い世代が北京、ニューデリーから世界を見て学ぶ必要がある」と語った。留学生の受け入れ大国の米国だが、支援制度が増加。同研究所によると、海外留学した米国人学生は04年の約20万6千人から08年は約26万人に増えた。

アジアでも教育政策に力を入れる中国は同期間で約38万1千人から約51万人に。人口が日本の半分以下の韓国も、約9万8千人から約11万5千人に増えている。

東大が「秋入学」で目指す若い人材の送り出し。新興国の教育市場に目を向ければ、新たな展望も開ける。

「大学で教える人が足りない。日本の人材を送ってほしい」。人口12億人超のインド。昨年9月、東京に日印の政官学のリーダーが集まった国際会議で、インドの上院議員が求めた。同国の大学進学率を現在の11%から25%に引き上げる場合、2千校以上の新設が必要になるという。

一方で、日本には、大学のポストが限られ、博士号を持ちながら活躍の場のない「ポストドクター」が09年度で約1.7万人いる。政府のグローバル人材育成推進会議幹事会座長を務めた鈴木寛・前文科副大臣は「日本は新興国に高度専門職業人材を送り出すことができる。大学教育を基幹産業と捉える発想の転換も必要」と語る。

日本の国際競争力を高め、国際社会に貢献する。「人材」をキーワードにした国や大学の戦略づくりが求められている。

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