2019年9月23日(月)

抗がん剤、新規参入の勝算は?遺伝子を診断、最適な薬 アステラス製薬社長 畑中好彦氏に聞く
そこが知りたい

2012/2/5付
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がんなど治療が難しい病気への対処法として「テーラーメード医療」が注目されている。遺伝子などを事前に調べて薬の効き方を予想し、最も効果が高いと思われる抗がん剤を選ぶことで治療効率を高める手法だ。昨年、抗がん剤市場に本格参入したアステラス製薬も、テーラーメード型の新薬開発に注力する。畑中好彦社長に狙いを聞いた。

――患者ごとに最適な薬、どう作る?

「我々は『個別化医療』と呼んでいる。患者を遺伝子情報に基づいていくつかのグループに分け、特定のグループだけに投与する方式の抗がん剤の研究開発を進めている。こうすれば従来の一般的な抗がん剤よりも効果が高く、副作用の少ない医薬品を生み出せると考えている」

――事業化に向けて、具体的に何をしているのか。

「当社が研究開発している15種類の抗がん剤のうち半数以上で、投与前に効きめを見きわめる診断薬も同時並行で開発している。その抗がん剤に適した遺伝子変異がある患者層を選び出し、薬の治療能力を最大限に発揮させる狙いだ」

「抗がん剤と診断薬をセットで事業化できるのは2015年度以降だろう。診断薬は自社で開発しているものもあるし、専門メーカーとの共同研究もある。診断薬の充実に向けて今後、新たな提携もありうる」

――アステラスが個別化医療に力を入れる理由は。

「当社は主に臓器移植に使う免疫抑制剤が主力製品の一つだが、これを使う際には血中濃度などを正確に測定し、患者ごとに細かく調整する必要がある。そんな薬を長年扱ってきたので、一種のノウハウは既に持っていると言っていい」

「さらに昨年には米国の製薬会社OSIファーマシューティカルズを統合し、抗がん剤事業へ本格参入した。免疫抑制剤での蓄積やOSIの技術を生かし、がん分野での個別化医療に対応できると考えている」

――中長期的な視点で立てている計画を知りたい。

「20年ごろには、当社が販売する抗がん剤の半数以上が、診断薬とのセットになる新体制が実現するだろう。最終的にほぼすべて、具体的には8~9割の抗がん剤で診断薬を確保したいと考えている」

「当社は『グローバル・カテゴリー・リーダー』という経営形態を追求している。医療用医薬品の研究開発の分野を絞り込む一方で、その分野では世界市場で主導的な位置を占める戦略だ。その目標に近づくM&A(合併・買収)ならば、常にオープンな姿勢で考えていく。我々は一般用医薬品(大衆薬)を持たず、後発薬に参入する考えもない。新薬に集中する会社が成長する手段として、個別化医療への対応は有効だ」

1980年一橋大経卒、藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。米国子会社の社長などを経て現職。54歳。

<聞き手から一言>「ニッチ薬」路線、提携戦略も課題

日本の製薬大手の多くは糖尿病など生活習慣病の治療薬を主な収益源として成長してきた。だが、アステラス製薬の前身である山之内製薬と藤沢薬品工業の主力薬は、それぞれ排尿障害の改善薬と免疫抑制剤。どちらも医薬品市場の「ニッチ製品」だ。

抗がん剤は米ファイザーといった海外の製薬大手も開発にしのぎを削る激戦区。「グローバル・カテゴリー・リーダー」を目指すアステラスが、個別化医療に照準を合わせて抗がん剤を開発するのは、欧米製薬大手に真っ向勝負を挑むのは得策でないとの判断もあるだろう。アステラス単独での開発には限界があり、提携戦略も今後の課題になりそうだ。

(村松進)

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