/

迫られるグローバル化 会社もヒトも一念発起

東日本大震災は、日本人の仕事観にも変化をもたらした。企業も個人もグローバル化や少子高齢化といった懸案を見据えるようになり、働く人への期待も、働く側の意識も昔には戻らない。新しい発想で仕事力を鍛え直すときだ。

9月、ポンプ大手の酉島製作所の若手社員11人はアラブ首長国連邦(UAE)とカタールのプラント建設現場に乗り込む。気温50度を超す灼熱(しゃくねつ)の砂漠で現地作業員と英語でやりとりして視察する。

酉島製作所の社員は2泊5日の強行軍で中東の現場を体験する(ドバイ)

2泊5日の「中東弾丸ツアー」。売り上げの3割を稼ぐ得意先、中東の現場を若手社員に経験させ、カンフル剤にする狙いがある。3年前に参加した南英梨(30)は「初めは行きたくなかった」。だが、自分の設計したポンプが動く現場の迫力に感動し、一念発起。「現地で働きたい」と帰国後、ラジオ英会話を始めた。

7月、東京商工会議所の中小企業向けベトナム進出セミナー。昨年の定員割れから一転、定員の1.6倍が応募した。温室製造・販売の渡辺パイプ(東京・墨田)は年内にベトナム進出を目指す。常務の野間明(58)は「震災で農業の復興は時間がかかる。ベトナムを足がかりにアジアに販路を広げたい」と話す。

震災、円高、電力不安……。日本にこもるリスクを意識し、海を越える企業の裾野は広がった。必要な人材をどう確保するか。小さな会社も知恵を絞る。

岐阜県は海外進出したい地場企業のために人材を育てる新事業を始めた。求人が「英語か中国語の使い手」なら、「そうなりたい」人を県が募集。内定すれば約7カ月の上海・香港での中国語・英語研修と就業体験を経て入社する。費用7千万円は県が緊急雇用対策交付金で賄う。いま11人が中国で語学研修中だ。

その一人、村井星等(29)は大垣市特産ヒノキの升を作る大橋量器に入社予定。同社はホームページへの米国からのアクセス急増をきっかけに、社員15人で米国での販売を目指す。村井は「地元の良さを海外に伝えたい」と応募した。

人材あっせんのリクルートエージェントによると、外国語でビジネスをこなす人材の求人は今後4、5年で数倍に膨らむ。生産も販売先も海外に軸足を移す大企業は即戦力を求め、外国人の採用も強化している。

住友化学は2008年から中国・インドの大卒採用を始め、今はグループの4割が外国人だ。リクルートが昨秋開いた中国の有名大学生向け日本企業採用イベントにはコニカミノルタホールディングスなど22社が参加。参加費100万円と内定1件につき110万円の成功報酬を払い、本社採用する金の卵を探した。

グローバル化の波は「同じ釜の飯」を重んじた日本型人事と意識を揺さぶる。

内向き志向懸念

「日本復興に貢献しよう」。野村ホールディングスの鳥海智絵グループ・シニア・マネージング・ディレクター(45)は3月、世界中の社員に向けたトップのメッセージ作成に追われた。

「あうんの呼吸」に慣れていた鳥海に呼びかけを助言したのは海外の同僚だった。野村は旧リーマン・ブラザーズの部門を継承し、社員の国籍が70に及ぶ多国籍企業に変身。組織をまとめる方法も変わる。

ダイキン工業は日本と海外拠点をつなぐ人材を求め、日本の外国人留学生と海外の日本人留学生の両方にアプローチしている。内外の人材を見比べる大企業の採用。超円高で、海外での優秀な人材の採用は国内より"割安"になった。

「外国人は英語も日本語も話せ、有能な学生が多い」と経済同友会代表幹事の長谷川閑史(65)は話す。日本の若者が内向き志向で安閑としていれば、置いてきぼりとなる。

(敬称略)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン