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オバマの戦争 ボブ・ウッドワード著

政権の内幕、生のまま細部を提示

ウッドワードの著書はもはやワシントンの恒例行事になった感がある。本書は『ブッシュの戦争』以来5冊目となるホワイトハウス内幕モノだ。オバマ政権に入ってからは最初のものとなる。

この本の評価は、この本に何を期待するかで大きく変わってくるだろう。鍵穴からホワイトハウスの地下にあるシチュエーション・ルームの様子を盗み見するような好奇心は間違いなく満たすことができる。これを、オバマ政権のアフガン政策策定の克明な記録と見なすか。それともワシントンのインサイド・ゲームの過剰な描写とみなすか。

ウッドワードはほぼリアルタイムで進行する事態を取材し、そこで得た情報をほとんど加工せずに、生のまま読者に提示する。情報は、大きなストーリーラインや分析枠組みで制御されることはない。ただひたすら細かなディテールが提示されるのみである。多くの場合、情報のソースは明らかにされない。

ウッドワードの取材力を疑う人はいないだろう。しかし、情報のソースが同氏に情報を提供する場合、ひとつ明らかなのは、自分が近い将来のベストセラーに情報を提供しているということをはっきりと認識していることだ。しかも、これまでの著作でウッドワードは、自分が信頼し、大きく依存した情報のソースについては同情的に描くことが指摘されている。

当然、情報提供者はこの構図を利用しようとするだろう。今回は、ジェームス・ジョーンズ前国家安全保障担当大統領補佐官が中心的な情報のソースのようだ。

無論、この本がジョーンズ色一色に染まっているわけではない。しかし、この本を読み解くためには、二重の読み方をしないといけない。つまり、読者自身がワシントンのインサイダー的な知識を持ち合わせていないと、まちがった構図を読み取ってしまう可能性がある。

ウッドワードの著作はそれ自体がもはやひとつの政治イベントになってしまった。これがウッドワードの本の面白さでもある。しかし、同時にそれは彼の著書を単なる「克明な記録」としては成立させえなくしてしまった。

(青山学院大学教授 中山俊宏)

[日本経済新聞朝刊2011年8月21日付]

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