地域間融通、欧州は国境越え送電網 世界電力事情
統一の周波数、事業者再編も

2011/7/27付
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東京電力福島第1原子力発電所の事故は、日本の電力業界を巡る様々な課題を浮き彫りにした。地域間での電力融通、原発の監督・規制、市民生活への影響を最小限にとどめる節電のあり方……。世界の電力事情をテーマごとに検証し、日本が直面する課題解決への手掛かりを探る。

今年4月、英国とオランダの間の北海海底に超高圧の送電線が完成した。英国と大陸の間で大量の電力を融通し合えるようになる。

「ブリットネッド」と名付けられたこの送電線は民間の送電会社が6億ユーロ(約670億円)を投じて敷設。6月には100万キロワットの試験送電に成功した。クリス・ヒューン英エネルギー・気候変動相は「英国の電力市場はより大きな欧州大陸の市場と直接つながった」と祝福した。

市民が料金比較

2007年に電力市場を全面自由化した欧州連合(EU)。「うちはもう2回も電力会社を変えた。ホームページで安い会社を探している」とパリ郊外に住む清掃作業員のマリ・クレールさんは話す。市民は各社の電力料金を比較するサイトを通じ内外の電力小売会社から契約先を決めるのが一般的だ。

こうした自由競争を支えるのが、欧州各国の国境をまたいで連係する送電網だ。小売業者は相対取引やスポット市場で各国の発電事業者から安価な電力を仕入れ、販売する。競争を通じた料金最適化が自由化の狙いだ。欧州の周波数は50ヘルツに統一されているので国境をまたいだ送電は容易だ。

イタリアは電力需要の十数%をフランス、スイスなどからの輸入に頼っている。一方、フランスはイタリアだけでなく英国、ドイツ、スイスにも電力を送っている。国を超えた競争の結果、体力を失った事業者は淘汰が進み、英国の電力会社が仏電力公社(EDF)に買収されるなど国際的な再編が起きている。巨大エネルギー企業が誕生する一方で、ドイツでは地方の中小の事業者が電力の小売りを担うなど多様化も進んでいる。

とはいえ、国境を越える送電線はまだ細い。EUは域内の国際送電線インフラを整える送電会社への融資などを通じネットワークの充実を急ぐ。

仏政府は昨年、地中海の海底にも超高圧送電線を敷き、仏やスペインと対岸のモロッコやアルジェリアなどと欧州の電力網を接続する計画を掲げた。エネルギー安全保障上の観点からも、欧州は送電ネットワークを域内から域外へと着々と広げつつある。

大市場を目標に

一方、統一が遅れているのが電力のスポット市場。最近では全電力の1割程度が市場で売買されているが市場は国ごとにある。統一運用の機運は高く、今年3月には英独とベルギー、オランダなどの市場が連携への試みを始めた。EUは最終的には域内の電力統一大市場を目標にしている。

脱原発の独・イタリアや原発推進の英仏。欧州各国の電力政策はモザイク状で国ごとにみると電源構成はバランスを欠いて映る。だが、各国間で電力融通を広げることでは一致。化石燃料と原子力、再生可能エネルギーをEU全体として効率よく利用する体制が固まりつつある。

(パリ=古谷茂久)

=随時掲載

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