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蚊に刺されない方法は 13通りを試してみたら

蚊の季節がやってきた。楽しいバーベキューや木陰での昼寝に水を差し、いつの間にか家にも忍び込んでくる小さな大敵だ。記者(36)が家族で公園に遊びに行くと、いつも4歳と2歳の娘ばかりが蚊に刺される。「お父さんより私の血の方がおいしいから?」と聞かれて困った。どんな人が蚊に刺されやすいのか。「体を張って探ってみよう」と実験に乗り出した。

日本には蚊が約100種類、うち30種ほどが人を刺す

まずは1人で蚊が多そうな近所の公園に半袖短パン姿で行った。猛襲を覚悟したが2、3匹がフラフラと寄ってくるだけ。拍子抜けだ。子どもは新陳代謝が活発で体温が高いから刺されやすいのだろう。自分の体温を測ると早朝とはいえ35.5度。かなり低い。そこで、少し走って汗をかき、体を温めてから再びトライした。すると10匹ほどがまとわりついてきた。

「よし。体温を上げた状態でベンチに座り、蚊にくわれにくい条件を試してみよう」。30分間に寄ってくる蚊の数で比較することにした。

汗をよくかく下の娘をみて、注目したのが汗だ。「こまめに拭けば集まらないのでは?」。露出している腕と脚をおしぼりで拭うと寄ってくる蚊が多少は減る。でも汗がにじんでくると増える。結局、この繰り返しで46匹の着地を許した。次に汗を抑えようと肌が白くなるほどベビーパウダーをふってみたが、40匹とそれほど効果はない。

「それなら風で強制排除しよう」。体重2~3ミリグラムしかない蚊は強い風にあらがって飛べない。うちわで30分あおぎ続けてみた。結果は47匹とワースト記録。風が当たる部分には近寄れなくても別の場所に回り込み、ひっきりなしに肌に止まる。隙をなくそうとうちわを左右で持ち替えてあおいでもダメだった。効果がない割に忙しく、読もうと持っていった雑誌は1ページも進まなかった。

疲れてふと横を見ると、背負ってきたリュックサックに蚊が3匹止まっている。汗のにおいと黒い色に引かれたのかもしれない。「これだ」。次の日、黒いシャツとリュックにたっぷり汗を含ませ、ベンチの端に"おとり"として置き、自分は白いシャツに着替えた。ゆったり過ごし蚊を数えるとシンプルな方法が意外に効いて23匹と上首尾だ。

汗・皮脂・飲酒と黒い服は禁物

他に蚊の好き嫌いはないものか。害虫防除技術研究所(千葉県八千代市)の白井良和所長に尋ねると「蚊は高い体温、汗に含まれる乳酸と水分、二酸化炭素(CO2)、皮脂を目がけて寄っていく」。つまり、体温が高くて汗かきの人が好みのタイプだ。またビールを飲んだ時によく刺されるのは、吐く息にCO2が増えて格好の標的になるから。濃い色が好きで、腕より足に引かれる傾向があるという。

「じゃあビールを飲まずに平皿に入れて置いてみれば放出されるCO2に引き寄せられるのでは」

ところがこの思惑に、ハエは寄ってきても蚊は興味を示さず34匹。「蚊はなかなかだまされませんよ」と白井所長はいう。汗が好きといっても、汗が流れている最中は肌が滑りやすいため着地を避けるほど。子どもだましは通用しない。

市販の虫よけ剤は当然のように効果抜群だった。ディートなどの化学物質を主成分とする虫よけ剤は30分でたったの2匹。クモの子を散らすように蚊が離れていった。ただし、健康への影響を配慮して子どもへの使用回数を制限する商品もある。身近なものを使って、何とかこの効果に迫れないか。

「ドラキュラが嫌うニンニク臭ならどうか?」。実験前日の昼にガーリック味のボンゴレスパゲティ、夜はギョーザ2人前を食べ、さらに翌朝ニンニクの断片を肌に塗って公園に繰り出した。妻が「くさい」と顔を背けるほどの臭気だったが、蚊は全く意に介さず、次々と寄ってくる。血行が良くなり、体温が上がったのかもしれない。

次は害虫対策に使われる木酢液を試してみた。説明書には「臭いを嫌がって犬や猫、虫が近寄らなくなる」とある。希釈したものを周囲にまいたが、今回も群がってくる勢いは衰えない。即効性はないのか、独特の臭いがむなしく残った。

柑橘(かんきつ)類の皮に含まれる成分に蚊を寄せ付けないものがあるという。ネットで調べた情報を基にレモンの皮の汁を搾って肌にこすりつけた。おっ、確かに寄ってこない。ただ、時間がたって汗をかくと蚊が集まりだし、結局27匹だ。レモン果汁の場合は33匹と効果はさらに小さく、ベトベト感も気になった。

噴霧1回では効果乏しく 

「アロマオイルなら、人体への害が少なく、虫よけ効果がないだろうか?」。精油専門店で相談すると「ありますよ。シトロネラ、ゼラニウム、ラベンダー、ミントなどが良さそう」という。爽やかな芳香に包まれて"防蚊"対策もできるのなら素晴らしい。精油とエタノール、精製水を混ぜてスプレーを作った。

ところが、いずれのスプレーも1回吹き付けただけでは20匹以上と予想外に多かった。レモンの皮と同じで、最初は効果があってもやがて汗の方が優勢になり蚊を引き寄せてしまう。精油専門店によると「効果が持続するのは2時間程度が目安」とのことだったが、わき出る汗には勝てない。

そこで爽快系のアロマ、シトロネラを30分間に4回と噴霧の頻度を上げてみた。一吹きごとに香りが広がる。水分が蒸発するときの気化熱で肌の表面が涼しい。結果は8匹と及第点。精油は数種類を混ぜると香りが柔らかくなるらしい。ゴキブリなど別の害虫よけのスプレーも作れるとか。汗を流しながら、たどり着いた切り札はアロマ。柄にもなく熱中しそうだ。

記者のつぶやき
 感染症にかかってはかなわないので、蚊が肌に止まるのを確認したらすぐに追い払った。ただ、この実験はまねしないでほしい。害虫の襲来を待つという変な実験が一段落した時は、心底ほっとした。
 庭いじりをする母は「今年は蚊が少ない」という。確かに猛暑と日照りのせいか、蚊が戦意を欠いている時間帯が長いように感じた。とはいえ暑さが和らぎ雨が増えれば元気を取り戻す。油断は禁物だ。
(下前俊輔)

[日経プラスワン2011年7月23日付]

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