生態がよくわかる動物園
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サバンナの臨場感に歓声
本来の生息する状態に近づけたり、動物が喜ぶ人工的な器具や設備を与えたり、と動物が快適に感じる環境を取り入れる動物園が増えている。全国の生態がよくわかる動物園の中から、大人も子どもも楽しめるところを専門家に選んでもらった。
動物園に本来の生息環境を取り入れる動きは、米国で30年ほど前から発展した。1999年開業のよこはま動物園ズーラシアは、この理念を日本で初めて全面的に採用した動物園として知られる。ただし「園路沿いの植栽は多いものの、森林の中で動物に突然出会うような臨場感を味わえるレベルには、当時は達していなかった」(選者の若生謙二さん)という。
1位の天王寺動物園はこの点に配慮し「アフリカサバンナゾーン」を2000年に一部完成させた。現地調査に基づき、似た植物や岩山などを配置。入り口付近の通路から少しずつ来園者の期待感をふくらませ、急に視界が開けて動物が見えるポイントを用意している。動物は来園者の正面か、見上げる位置にいて、臨場感を増す仕掛けだ。
同様の視覚的な配慮をした動物園が、今回3、10位に入った。また、ズーラシアが09年に完成させた4位の「チンパンジーの森」でも、同様の工夫が施され、人気となっている。
一方で、旭山動物園は97年、人工的な設備も使いつつ、動物の行動を引き出す手法を取り入れた。2位に入ったあざらし館は04年に完成し、動きを間近で見られる水槽が話題を集めて入園者の急増につながった。「トレーナーがいなくても、動物本来の動きを引き出すことができる究極のコントロール」(選者の森由民さん)とされる。9位の市川市動植物園の「オランウータン」でも類似の取り組みをしている。
本来の生態に近づけたものとして、車中から見学するサファリ式の施設もあるが、今回は対象外とした。
動物の能力を目の当たりに
そのほかにも生態の見せ方に工夫を凝らした動物園は多い。到津の森公園(北九州市)では、岩山を駆け登り倒木の上を歩くといった、ヤギ本来の運動能力の高さを引き出す工夫が関心を集めている。
富山市ファミリーパークには、ニホンアナグマの穴を掘るという行動を観察できるコーナーがある。東京都の多摩動物公園(日野市)では、モグラの土の中での行動をアクリル板越しに見たり、金網で作ったトンネルを走り回ったりする様子が間近に見られる。
京都市動物園の京都大学と連携したチンパンジーのコーナーもユニーク。タッチパネル式のコンピューターを使って数字の順番などを学び、知性を引き出す様子を公開している。
調査の方法 展示方法に工夫があり、動物の生き生きとした様子を、なるべく近くで見られる動物園35施設を候補に選出。そこから専門家に上位10施設を選んでもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。写真は動物園提供。
内山晟(動物写真家)▽片山めぐみ(札幌市立大学デザイン学部専任講師)▽佐々木司郎(「動物園ぴあ」編集長)▽佐々木隆(オールアバウト動物園ガイド)▽実吉達郎(動物研究家)▽宮下実(近畿大学先端技術総合研究所・教授)▽村田浩一(日本大学生物資源科学部教授)▽森由民(動物園ライター)▽やきそばかおる(動物写真家)▽若生謙二(大阪芸術大学環境デザイン学科教授)▽綿貫宏史朗(動物園学研究家)