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がんばろう日本 大震災で見えてきたこの国の課題

東京本社編集局長 小孫茂

巨大地震と大津波は日本にとって戦後最大の災害となりました。多くの犠牲者にお悔やみを申し上げますとともに、被災者の方々にお見舞いを申し上げます。

大震災との闘いはまだ始まったばかりだが、日本は徐々に立ち上がりつつある。水道や電気、道路、港の復旧がようやく進み、仮設住宅の建設も始まった。被災した町ごと避難を受け入れる自治体も相次ぐ。

東京電力の福島第1原子力発電所では、消防や自衛隊、500人以上の専門家が燃料棒の冷却と格闘する。高濃度の放射線被曝(ひばく)や爆発という危険を覚悟しての作業だ。

先日、高速道のサービスエリアで福島県内の被災地に向かう自衛隊部隊と出会った。一人の隊員は「最悪の事態になっても最後まで残ります」と笑顔を見せた。

避難住民の間では遅い救援への焦りや怒りも募っている。それでもがんばっている現場では、人と人のつながりや強い責任感が真っ先に「復興」しつつある。

もちろん重大局面は続いている。原発は燃料棒冷却の効果が出なければさらに放射性物質を拡散させる。最悪の事態を防ぐには政府と東電、自衛隊、消防、警察、米軍などとの連携を生かす強い決断力が必要だ。

現状をみると説明役は多いが、「決断を下す指揮官」が見えない。作業員の命や国民の安全、国家の命運を左右するだけに、この責任を負えるのはただ一人。首相は逃げてはいけない。

与野党はいまなお責任の押しつけ合いや党益優先の行動に終始し、救援・復興体制を固められない。これでは国家や首都の機能まひを疑われ、風評被害が出てしまう。

政治の役割は原発対策に限らない。日本経済研究センターは復興事業が「20兆円以上」に及ぶと予測する。民主党の主要政策ながら効果に疑問のある子ども手当や高速道路の無料化などを棚上げして、救援・復興財源の一部に充てるべきだ。

国内に滞留する巨額資金も復興国債や復興税によって生かせばよい。安全・安心な省資源社会への総合計画を作る好機でもある。それもできないようなら市場から見放されかねない。

世界は過去数年、歴史に残る3つの大波に洗われ続けている。1つはリーマン・ショックで先進国を襲ったデフレ不安。各国中央銀行による資金の大量供給で大不況は回避したが、余剰マネーが回った新興国でバブルとその崩壊という2つ目の不安を生んだ。

3つ目はネットを使った中東・北アフリカの民主化。力で押さえ込もうとした結果、米欧によるリビア攻撃を招いた。この混乱が余剰マネーと共振して資源価格の高騰を招き、先進国と新興国を揺さぶる。

そこに今回の大津波で原発不安と世界的な部品供給不安という日本発の波が加わった。この国の失速は世界の一大事だ。政府の対応が遅れると、「国際機関の全面介入」案が浮上しても不思議はない。海外からの「がんばれ」は「しっかりしろ」の意味でもある。

企業はこうした声に敏感だ。大手電機メーカーの経営幹部は「電力不安のない西日本や海外で増産し、世界への部品供給を早急に再開して責任を果たす」と言う。「ただ東日本から逃げたと言われたくない。社員移動は静かに進めている」

電力供給に不安が続く東日本から西や海外に生産を移すのは当然の判断だ。企業が早期に復活すれば、国全体の復興につながる。胸を張って「日本はがんばっているぞ」と世界に返信してほしい。

大震災は「失われた20年」を続けたこの国の問題を鮮明にした。その認識が明治維新、戦後復興に続く「三度目の奇跡」を起こすと信じたい。今日は春分の日。来月には被災地にも桜の季節がやってくる。

がんばろう日本。

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