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政府、複合危機に立ちすくむ

動かぬ輸送船、沈黙の原子力安全委 「政治主導」機能せず

(更新)
首相官邸で開かれた緊急災害対策本部(17日午後)

未曽有の災害となった東日本巨大地震に立ち向かう政府の危機管理に批判が強まってきた。阪神大震災以来、政府は危機管理体制の強化を進めてきたが、地震と津波、原子力発電所の事故と同時に発生した複合危機に対応しきれていない。政治家と官僚の連携や民間企業との意思疎通も十分とは言えない。危機はなお進行中で、態勢の立て直しは待ったなしだ。

「首相官邸は原子力発電所の事故対応に追われ、被災地の復旧・復興計画にまで手が回っていない」。内閣官房のある幹部はこうこぼす。

食料や燃料などの不足に真冬並みの寒さが襲う被災地。救援物資を海上から運び込むため、宮城県の仙台塩釜港と岩手県の釜石港、宮古港を16日までに復旧し、国土交通省は輸送船も船会社9社の17~18隻を確保した。だが、これら船舶はいまだに待機中だ。

どんな物資をどこに運ぶかは首相官邸の緊急災害対策本部が一元的に決めるが「具体的な要請が下りてこない」(同省海事局)ためだ。

政府内には地震発生後、様々な組織が設置され、首相と全閣僚の緊急災害対策本部だけで開催数は12回に及んだ。官邸の首相執務室前にはレクチャーのための官僚が列をなす。だが「菅直人首相と枝野幸男官房長官で、適切な判断ができているか」となると、関係者は口を濁す。

首相は15日に東京電力本店を訪れ、官邸への連絡遅れなど同社の原発事故対応を叱責した。これには野党などから「最高責任者が民間企業に出向いて怒声を上げるのはいかがか」との指摘もでた。しかし、首相は周辺に「東電には福島第1原発が最悪の事態になったら東日本がつぶれる、という危機感が薄い。だから乗り込んだんだ」と力説しているという。

雄弁な首相官邸と対照的に、原発の安全規制について検討する原子力安全委員会(班目春樹委員長)は沈黙する。同委がある合同庁舎4号館6階の入り口はロープが張られ、近づけない。

原子力安全委の関係者は「原発事故への対応は官邸に一元化している。情報が漏れないための措置」と説明する。だが、背景に「政治主導」にこだわる民主党政権と「責任は政治にある」と言わんばかりの官僚のすれ違いがある――。そんな指摘は少なくない。

枝野氏は16日、原発事故に絡む放射線量上昇の理由について、経済産業省原子力安全・保安院と異なる説明をし、結局発言を修正。敏感な問題だけに「なぜ官僚を同席させないのか。間違いはその場で正さないと影響が大きい」との声が上がった。

相次ぐ初歩的なミスが、政と官の連携不足をあらわにする。首相が記者会見で「了承した」と説明した東京電力による計画停電(輪番停電)。初日から混乱続きの一因は、政府内の調整不足にあるとの見方が多い。

東京電力は13日夜、官邸の了解を得たうえで計画停電を決めた。だが国交省鉄道局は東電から説明を直接受けられず、首都圏の鉄道会社もダイヤ変更に追われた。

経産省内でも、発表まで計画停電を知らなかった部局も少なくない。省内からは「もっと早く知っていたら、企業への周知もできた」と不満も漏れる。遅まきながら、同省は東電との間で生活に密接に関連する大口需要家を計画停電の対象から外す案を検討中だ。

震災発生から7日。首相は隣接する首相公邸にも帰らず、官邸内にこもっている。枝野長官も2度、敷地内の官房長官公邸に足を運んだだけだ。

「死力を尽くしてこの状態を乗り越えたい」。首相は17日夜の緊急災害対策本部でこう語ったが、危機管理は結果責任。首相が背負った課題は重い。

「首相官邸は原子力発電所の事故対応に追われ、被災地の復旧・復興計画にまで手が回っていない」。内閣官房のある幹部はこうこぼす。

食料や燃料などの不足に真冬並みの寒さが襲う被災地。救援物資を海上から運び込むため、宮城県の仙台塩釜港と岩手県の釜石港、宮古港を16日までに復旧し、国土交通省は輸送船も船会社9社の17~18隻を確保した。だが、これら船舶はいまだに待機中だ。

どんな物資をどこに運ぶかは首相官邸の緊急災害対策本部が一元的に決めるが「具体的な要請が下りてこない」(同省海事局)ためだ。

政府内には地震発生後、様々な組織が設置され、首相と全閣僚の緊急災害対策本部だけで開催数は12回に及んだ。官邸の首相執務室前にはレクチャーのための官僚が列をなす。だが「菅直人首相と枝野幸男官房長官で、適切な判断ができているか」となると、関係者は口を濁す。

首相は15日に東京電力本店を訪れ、官邸への連絡遅れなど同社の原発事故対応を叱責した。これには野党などから「最高責任者が民間企業に出向いて怒声を上げるのはいかがか」との指摘もでた。しかし、首相は周辺に「東電には福島第1原発が最悪の事態になったら東日本がつぶれる、という危機感が薄い。だから乗り込んだんだ」と力説しているという。

雄弁な首相官邸と対照的に、原発の安全規制について検討する原子力安全委員会(班目春樹委員長)は沈黙する。同委がある合同庁舎4号館6階の入り口はロープが張られ、近づけない。

原子力安全委の関係者は「原発事故への対応は官邸に一元化している。情報が漏れないための措置」と説明する。だが、背景に「政治主導」にこだわる民主党政権と「責任は政治にある」と言わんばかりの官僚のすれ違いがある――。そんな指摘は少なくない。

枝野氏は16日、原発事故に絡む放射線量上昇の理由について、経済産業省原子力安全・保安院と異なる説明をし、結局発言を修正。敏感な問題だけに「なぜ官僚を同席させないのか。間違いはその場で正さないと影響が大きい」との声が上がった。

相次ぐ初歩的なミスが、政と官の連携不足をあらわにする。首相が記者会見で「了承した」と説明した東京電力による計画停電(輪番停電)。初日から混乱続きの一因は、政府内の調整不足にあるとの見方が多い。

東京電力は13日夜、官邸の了解を得たうえで計画停電を決めた。だが国交省鉄道局は東電から説明を直接受けられず、首都圏の鉄道会社もダイヤ変更に追われた。

経産省内でも、発表まで計画停電を知らなかった部局も少なくない。省内からは「もっと早く知っていたら、企業への周知もできた」と不満も漏れる。遅まきながら、同省は東電との間で生活に密接に関連する大口需要家を計画停電の対象から外す案を検討中だ。

震災発生から7日。首相は隣接する首相公邸にも帰らず、官邸内にこもっている。枝野長官も2度、敷地内の官房長官公邸に足を運んだだけだ。

「死力を尽くしてこの状態を乗り越えたい」。首相は17日夜の緊急災害対策本部でこう語ったが、危機管理は結果責任。首相が背負った課題は重い。

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